2016 Fiscal Year Research-status Report
走査型SQUID顕微鏡を用いた強相関電子系超伝導体の研究
Project/Area Number |
16K17742
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下澤 雅明 東京大学, 物性研究所, 助教 (40736162)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 走査型磁気顕微鏡 / ワイルフェルミオン / ベリー位相 / 軌道磁化 / 量子スピン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査型磁気顕微鏡を用いて時間反転対称性の破れたワイルフェルミオン物質Mn3Snで期待されているベリー位相由来の(遍歴)軌道磁化を直接観測することに取り組んだ。この軌道磁化は、一般的に知られているスピン磁化と異なる空間分布を示す。そこで我々は、試料の各場所における局所磁化を精密に評価することで、スピン磁化から遍歴的な軌道磁化を抽出することに世界で初めて成功した。本研究によって軌道磁化とスピン磁化が互いに逆方向を向いていることが分かり、この結果は第1原理計算による理論とよく一致している。また、先行研究の異常ホール伝導度が温度を下げるにつれて増大するので、軌道磁化も低温で大きくなることが期待されていた。幅広い温度領域(室温から低温)で局所磁化を測定した結果、低温で軌道磁化が増大することを確認した。現在これらの内容をまとめており、近日中に論文を投稿する予定である。 さらに本年度は、κ-H3(Cat-EDT-TTF)2がどのようなメカニズムで量子スピン液体状態を実現しているのかを解明するために、元素置換系であるκ-H3(Cat-EDT-d4-TTF)2とκ-H3(Cat-EDSe-TTF)2の研究を行った。元素置換を行うことで、プロトンの量子揺らぎを系統的にコントロールすることができる。熱伝導率・トルク測定から、プロトン揺らぎがスピン液体状態を安定化するために重要な役割を果たしている結果が得られた。上記の内容は、既に物理学会などで発表した。今後、ESR・誘電率測定・走査型SQUID顕微鏡による局所磁化測定などを行うことで、Cat系で実現している量子スピン液体状態についてより詳細に調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走査型磁気顕微鏡を用いて、時間反転対称性の破れたワイルフェルミオン物質Mn3Snの研究を行い、ベリー位相由来の(遍歴)軌道磁化を直接観測することに世界で初めて成功した。本来予定していた超伝導研究とは大きくかけ離れてしまったが、時間反転対称性の破れたワイルフェルミオン物質の研究は緊急性を要するものでありやむを得なかった。ただ上記の研究により、走査型磁気顕微鏡による局所磁化測定は超伝導研究以外にも有用であることを示すことができた。さらにMn3Snの研究で、走査型磁気顕微鏡に関する多くのノウハウを手に入れることができた。これは、今後の超伝導研究を円滑に進めて行く上で非常に重要である。以上から、本研究の進捗状況は良好であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、走査型磁気顕微鏡を用いて、銅酸化物高温超伝導体やウラン化合物の超伝導研究を行う。銅酸化物高温超伝導体に関しては、擬ギャップと超伝導の関連性を明らかにするために、超伝導相内に擬ギャップ(相)に関する量子臨界点が存在するかどうかなどを確かめる予定である。ウラン化合物に関しては、時間反転対称性の破れに伴う自発磁化の直接観測を行うつもりである。
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Causes of Carryover |
本年度は当初の予定とは異なり、液体ヘリウムをほとんど使わなかった。そのため、来年度のヘリウム代に回すためお金を残している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
液体ヘリウム代、TMR(磁気センサー)を購入する予定である。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Dome-shaped magnetic order competing with high-temperature superconductivity at high pressures in FeSe2016
Author(s)
J. P. Sun, K. Matsuura, G. Z. Ye, Y. Mizukami, M. Shimozawa, K. Matsubayashi, M. Yamashita, T. Watashige, S. Kasahara, Y. Matsuda, J. -Q. Yan, B. C. Sales, Y. Uwatoko, J. -G. Cheng, and T. Shibauchi
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: 12146
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Tuning the Magnetic Quantum Criticality of Artificial Kondo Superlattices CeRhIn5/YbRhIn52016
Author(s)
T. Ishii, R. Toda, Y. Hanaoka, Y. Tokiwa, M. Shimozawa, Y. Kasahara, R. Endo, T. Terashima, H. Nevidomskyy, T. Shibauchi, and Y. Matsuda
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 116
Pages: 206401
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] カイラル反強磁性体Mn3Snの局所磁化測定2017
Author(s)
向笠清隆, 下澤雅明, 鈴木喜貴, 山下穣, Muhammad Ikhras, 冨田崇弘, 肥後友也, 中辻知, Marcin Konczykowski, 松田祐司, 松浦康平, 水上雄太, 芝内孝禎, 近藤潤, 杉井かおり, 中村壮智, 勝本信吾
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府豊中市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] CeCoIn5薄膜におけるブロードなNQRスペクトルと核スピン 格子緩和率の分布2017
Author(s)
山中隆義, 下澤雅明, 遠藤僚太, 水上雄太, 宍戸寛明, 北川俊作, 池田浩章, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司, 石田憲二
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府豊中市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] CeCoIn5/CeRhIn5ハイブリッド超格子の圧力下における超強結合状態2017
Author(s)
成塚政裕, Priscila F. S. Rosa, Yongkang Luo, Filip Ronning, Joe D. Thompson, 石井智大, 三宅聡平, 下澤雅明, 芝内孝禎, 常盤欣文, 笠原裕一, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府豊中市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] 59Co-NMRによる人工超格子CeCoIn5/CeRhIn5とCeCoIn5/YbCoIn5の比較2017
Author(s)
仲嶺元輝, 山中隆義, 北川俊作, 石田憲二, 石井智大, 成塚政裕, 鳥井陽平, 下澤雅明, 宍戸寛明, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 水上雄太, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会 第72回年次大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府豊中市)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-20
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[Presentation] Maximizing superconducting coupling strength in heavy-fermion hybrid superlattices of CeCoIn5/CeRhIn52017
Author(s)
Masahiro Naritsuka, Tomohiro Ishii, Souhei Miyake, Yuichi Kasahara, Takahito Terashima, Yuji Matsuda, Yoshifumi Tokiwa, Masaaki Shimozawa, Takasada Shibauchi, P. F. S. Rosa, Yongkang Luo, Filip Ronning, Joe D. Thompson
Organizer
APS March meeting 2017
Place of Presentation
ニューオーリンズ(アメリカ合衆国)
Year and Date
2017-03-13 – 2017-03-17
Int'l Joint Research
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[Presentation] Anomalous thermal and magnetic properties of the chiral antiferromagnet Mn3Sn2017
Author(s)
M. Shimozawa, K. Sugii, Y. Imai, J. Kondo, Y. Suzuki, M. Yamashita, T. Nakamura, S. Katsumoto, M. Ikhras, T. Higo, T. Tomita, N. Kiyohara, S. Nakatsuji, M. Konczykowski, Y. Matsuda, K. Mukasa, K. Matsuura, Y. Mizukami, T. Shibauchi
Organizer
TPFC2017
Place of Presentation
東京大学(千葉県柏市)
Year and Date
2017-02-20 – 2017-02-22
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Quantum spin liquid induced by entangled electron-proton degrees of freedom2017
Author(s)
M. Shimozawa, K. Hashimoto, A. Ueda, Y. Suzuki, K. Sugii, S. Yamada, Y. Imai, R. Kobayashi, K. Itoh, S. Iguchi, M. Naka, S. Ishihara, H. Mori, T. Sasaki, and M. Yamashita
Organizer
CEMS-QPEC Symposium on Emergent Quantum Materials
Place of Presentation
東京大学(東京都文京区)
Year and Date
2017-01-18 – 2017-01-20
Int'l Joint Research
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[Presentation] Mn3Snの異常熱ホール効果2016
Author(s)
杉井かおり, 今井悠介, 下澤雅明, Muhammad Ikhlas, 清原直樹, 冨田崇弘, 中辻知, 山下穣
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
金沢大学(石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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[Presentation] CeCoIn5トリコロール超格子によるPauli対破壊効果の人工制御2016
Author(s)
三宅聡平, 石井智大, 成塚政裕, 鳥井陽平, 下澤雅明, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 石田憲二, 松田祐司
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
金沢大学(石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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[Presentation] RCoIn5薄膜(R = Ce, Yb)における核四重極共鳴測定2016
Author(s)
山中隆義, 下澤雅明, 北川俊作, 遠藤僚太, 水上雄太, 宍戸寛明, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司, 石田憲二
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
金沢大学(石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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[Presentation] 重い電子系超伝導化合物CeCoIn5と反強磁性化合物CeRhIn5の人工超格子CeCoIn5/CeRhIn5のNMR2016
Author(s)
仲嶺元輝, 山中隆義, 北川俊作, 石田憲二, 石井智大, 成塚政裕, 鳥井陽平, 下澤雅明, 笠原成, 常盤欣文, 笠原裕一, 芝内孝禎, 寺嶋孝仁, 松田祐司
Organizer
日本物理学会 秋季大会
Place of Presentation
金沢大学(石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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