2016 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を触媒とした新しい環境低負荷型リビング重合系の確立
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16K17911
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高田 健司 金沢大学, 自然システム学系, 特任助教 (10772171)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リビング重合 / アニオン重合 / 有機分子触媒 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機分子触媒を用いた重合をより環境に負荷のかからないものにするために、イオン液体を触媒とした新規リビング重合系の確立を目的とした。具体的にはイオン液体系内で生成している N-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) を触媒としたグループトランスファー重合 (GTP) および開環重合 (ROP) 系を確立し、その触媒生成機構を含めた重合機構を明らかにするべく研究を進めた。 本年度はイオン液体を用いた重合反応が進行することを確認するために、所定のイオン液体を触媒量使用し、メタクリル酸メチルのGTPを試みた。その結果、重合は進行することが核磁気共鳴や液体クロマトグラフィーの利用により確認され、ある種のイオン液体に触媒能があることが確認された。このことから平成28年度の目標の一つである「イオン液体を利用したグループトランスファー重合の確立」は概ね達成されたと言える。イオン液体を触媒としたGTPはこれまでに報告されておらず、この成果は、新たな触媒系による重合系を発見したものとなる。 しかしながら、上記の重合反応において、イオン液体が示した触媒能がどのような機構なのか、例えばイオン液体内にてNHCが生成していることの確認や、イオン液体中のアニオンもしくはカチオン成分のどちらかが重合に作用しているかといった詳細な検討はできておらず平成28年度の計画の一つである「触媒の作用、重合機構の解明」は平成29年度においても引き続き行う必要がある。触媒の生成機構や重合機構が解明できることで、本研究にて明らかにした反応系を他のモノマーに応用し、材料開発へと展開させることが可能である。今後はイオン液体の触媒機能や重合機構を各種、分光学的手法や計算科学を用いて解明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はイオン液体を用いた重合反応が進行することを確認するために、イオン液体を触媒量使用し、メタクリル酸メチルのGTPを試みた。イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンを有し、それぞれ、塩素アニオン、臭素アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、四フッ化ホウ素アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ビストリフリルイミドアニオンを用いた。まず、各イオン液体のイミダゾリウム塩から2位の水素が引き抜かれてN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)が生成することを確認するため、カリウムtert-ブトキシド(tBuOK)を共存させて重合を試みた。その結果、重合は進行し水素引き抜きが起きればNHCが生成することが確認された。次にtBuOKを添加しない、水素の引き抜きが起こらない系にて重合を試みた結果、酢酸アニオンのみ重合が進行した。この結果からある種のイオン液体に触媒能があることが判明した。生成されたポリマーの分子量やその分子量分布は厳密に制御するに至っていないが、これは反応条件の最適化により解決できるものと考えられる。従って平成28年度の目標の一つである「イオン液体を利用したグループトランスファー重合(GTP)の確立」は概ね達成されたと言える。イオン液体を触媒としたGTPはこれまでに報告されておらず、この成果は、新たな触媒系による重合系を発見したものとなる。さらに試験的ではあるが開環重合系にも適用化のであることが示唆された。 「イオン液体の触媒の作用、重合機構の解明」については、その解明方法などの文献調査を進めた。実験による検討を進めたがいまだ解明には至っておらず、平成29年度も引き続き機構の解明を急ぎつつ、その汎用性を高める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に達成した重合系において、イオン液体が示した触媒能がどのような機構なのか、例えばイオン液体がin-situでNHCが生成していることの確認や、イオン液体中のアニオンもしくはカチオン成分のどちらかが重合に作用しているかといった詳細な検討を平成29年度においても引き続き行う予定である。触媒の生成機構や重合機構が解明できることで、本研究にて明らかにした反応系を他のモノマーに応用し、材料開発へと展開させることが可能である。 イオン液体の触媒生成機構や重合機構は、イオン液体と重合の開始剤、イオン液体とモノマー、などの組み合わせで核磁気共鳴スペクトルを測定することで検討を進める。さらに生成したポリマーの分子構造を質量分析などで詳細に解析することも視野に入れる。さらにその生成機構を計算科学的な手法により検討を進める。 また、当初の計画通り平成29年度からは、①さまざまなモノマーの重合、②ポリマー末端に官能基を導入できるかなどの応用法を検討を行う。
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