2016 Fiscal Year Research-status Report
超塑性材料/非超塑性材料クラッド材の変形挙動メカニズムの解明
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16K17989
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
徳永 透子 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30767299)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マグネシウム合金 / 超塑性 / クラッド材 / 複合材料 / アルミニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脆性材料と延性材料を組み合わせた複合材料の強度物性に関する新たな学理構築のために、超塑性材料/非超塑性材料クラッド材の変形挙動を巨視的変形挙動とミクロ組織変化を関連付けて明らかにすることを目的としている。当該年度は脆性材料と延性材料を組み合わせた複合材料としてMg合金/Alクラッド材を押出加工と圧延加工により作製し、そのクラッド材の耐食性および引張特性を調査した。引張特性の調査においては、試験温度は室温~300℃、ひずみ速度は1.0×10-2~1.0×10-3 s-1とし、それぞれの影響を調査した。また、圧延方向に対して引張方向を変化させることで、クラッド材の異方性も調査した。超塑性材料と非超塑性材料の両方の変形挙動および変形メカニズムを詳細に明らかにするために、引張試験途中で試験を中断し、超塑性変形中の結晶粒サイズ、形態、方位を求めた。また、KAM(Kernel Averaged Misorientation)マップを用いて、Mg合金、Al両方における塑性ひずみ量分布の変化も調査した。クラッド材は純Alと同等の優れた耐食性を示した。また、室温で強度および伸びの両方に対して顕著な異方性を示したが、一方高温では異方性は見られなかった。300℃においては、ひずみ速度感受性指数と伸びの観点から本クラッド材は超塑性変形を示すことが明らかとなった。超塑性変形を示した条件において、Mg合金では動的再結晶および粒界すべりが生じたため、超塑性伸び後も結晶粒は等軸形状を保ち、粒径はほぼ変化しなかった。一方、Al被覆層においては動的回復が生じたが、再結晶は起こらず、超塑性変形後は引張方向に長く伸びた結晶粒が観察された。結晶粒内において高いKAM値が測定されたため、粒内における転位の運動により変形が進行していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に予定していた実験研究はおおむね順調に進んでいる。当該年度に行う予定であったAl/Mg界面に生成する金属間化合物のEBSD(Electron BackScatter Diffraction)解析に関しては解析に必要なマテリアルファイルの作成が計画通りに進まず、解析を行うことができていないが、現在マテリアルファイルの作成は最終調整を行っている段階であり、金属間化合物のEBSD解析は平成29年度前半に行う予定である。一方、当該年度に行う予定であった有限要素解析の進展はやや遅れている。有限要素解析に用いるMg合金とAlの材料モデルの作成が難航しており、計画していた引張試験の有限要素解析が遂行できていない。以上のことから、評価を「やや遅れている」とした。有限要素解析およびその後のマルチスケールモデリングに関して研究協力を依頼しているポーランド・AGH科学技術大学のLukasz Madej教授と密に連絡を取り合い、ディスカッションを重ねており、材料モデルの作成は遅れてはいるが、解析ソフトの準備等はできており、材料モデルの用意が整い次第すぐに解析に取り組める状態であるため、平成29年度の前半には解析を始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
有限要素法解析を遂行するために、早急に材料モデルの作成を行う。Mg合金およびAl両方に関して、材料モデルの作成に必要な機械的特性のデータは既にそろっているため、材料モデルを作成してその妥当性の検証を行う。作成した材料モデルを用いて超塑性変形を解析し、伸びや引張変形後の試験片形状を実験結果と比較することで有限要素解析の妥当性を検証する。有限要素解析の結果をもとにCAFE(Cellular Automata-Finite Element)モデルを用いたマルチスケールモデリングをポーランドのAGH科学技術大学のLukasz Madej教授の指導の下で行い、有限要素解析から得られた巨視的な応力場と関連付けることで、超塑性変形中のミクロ組織変化を明らかにする。また、当該年度に行うことができなかった金属間化合物のEBSD解析を早急に行い、金属間化合物/Al間および金属間化合物/Mg間におけるミクロ組織変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
金属間化合物層のEBSD解析およびTEM観察が予定通りに進まなかったため、装置利用料として計上していた予算が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を当該年度に予定していた金属間化合物のEBSD解析のための装置利用料として使用することを予定している。
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