2016 Fiscal Year Research-status Report
放電環境制御によるマイクロ部品の形状創成と高精細表面改質法に関する研究
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16K17994
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
平尾 篤利 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70455111)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放電加工 / 超音波振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの自作加工機は,ステッピングモータを主軸に用いたサーボ制御を実施していた。ステッピングモータを用いた主軸制御は,応答速度が数十Hzと遅い。このため,放電が不安定になりやすく,加工速度が遅くなってしまう。さらに,集中放電の発生が頻発することで加工面粗さが悪化する。そこで,超音波振動を工具電極に付与することで,放電の安定化を試みた。工具電極には銅を用い,直接ランジュバン型振動子に取り付けた。通常の放電加工と比べて,超音波振動を付与した場合,放電頻度が向上した。さらに,集中放電などの異常放電の発生が減少した。これによって加工面に集中放電痕の形成が減少していることが確認された。工具電極の振幅は,渦電流変位センサおよびレーザ変位計にて計測した。φ 5 mmの銅電極を振動子に取り付けた場合,振幅は6 μmで飽和した。振幅1 μmの超音波振動を付与することで,加工速度は2倍以上増大することが確認された。また,振幅6 μmを付与することで6倍増大した。一方,表面粗さを計測した結果,超音波振動を付与した方が,加工面粗さの悪化が確認された。このことは,放電加工時の極間距離が影響しているものと考えられる。極間距離が狭い場合,放電における気化圧力が大きくなり,極間距離が広い場合より大きな放電痕が形成されると予想される。そこで,主軸サーボにおける基準電圧を調整することで,極間距離を拡大することとした。ここでの基準電圧は,電極工具および被加工物の極間距離の制御パラメータである。基準電圧が大きいほど,極間距離が拡大している。基準電圧60 Vと30 Vと比較した結果,基準電圧30 Vとした方が,加工面粗さが悪い結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では,減圧雰囲気下で放電加工の加工条件の検討を実施予定であった。しかし,超音波振動を付与した放電加工機の構築に時間を有してしまい,減圧雰囲気下での実験にまでは至っていない。現段階では,減圧雰囲気下で動作する放電加工機を構築している状況である。真空チャンバー内にデスクトップ型の加工機は構築済みであり,主軸制御の動作は確認済みである。また,電流導入端子を用い真空チャンバーと外部との接続も完了している。電流導入端子から放電電圧・放電電流・制御信号などを真空チャンバー内に送ることで,遮断された外部から放電加工を実現している。さらに,加工条件の検討項目である波形の制御プログラムはLabVIEWを用いることで既に製作済みである。MosFET を複数個用い,LabVIEWから送られた制御信号によって各FETのスイッチングを実施する。これまでに,段付きパルス,階段状パルス,スロープ状のパルス制御を実現しており,実際の加工機へ展開することで予熱放電,余熱放電などの放電加工が可能となる。一方,機能性付与の試みとして,同一条件において各種材料が表面改質におよぼす影響を検証している。同一条件における電極材料と被加工物の組み合わせを検討することで,表面に対して堆積または除去加工の境界を検証している。同時に,プラス極性,マイナス極性の違いがおよぼす影響を調査している。これまで,同一条件における鋼材(NAK55)と銅を比較した。この時,電極には銅(φ5 mm,肉厚0.2 mm)のパイプ型とし,回転数を5000 rpm以上とした。NAK55は除去加工であったのに対して,銅は堆積加工となった。10minの放電によって約2μmの体積高さを確認している。また,回転数による影響は確認されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,真空度および各種電極材料に関する基礎データの習得を実施する。また,同一条件下での各雰囲気(油中,減圧雰囲気中,気中)における表面粗さ,加工速度,放電痕の大きさ,放電頻度などの基礎データを取得する。特に,極性の違いが表面に及ぼす影響を,SEMによって加工表面のマイクロ領域まで観察する。これまで,銅電極を用い鋼材(NAK55)および銅に対して基礎データを習得している。今後,単結晶材料であるシリコン,高硬度材料のチタン,耐食性のニッケルなどについて基本的となるデータベースを構築する。これまで超音波振動を工具電極に対して付与することで表面粗さが悪化する結果となった。基準電圧を極間距離の指標として用い,加工面粗さは基準電圧の小さい方が悪い結果となり,極間距離が狭いと表面粗さが悪くなると考察している。しかしこの実験では,実際の極間距離を測定しているのではないため,精確な極間距離と表面粗さの関係を調査する必要がある。工具電極は被加工物と接触検知を行った後,設定した距離だけ上昇させることで極間距離値とする。この極間距離を固定した状態で連続放電を実施し,ある一定の放電を発生させた後,表面に形成された放電痕の大きさおよび粗さなどを評価する。表面への機能性付与の試みとして,放電プラズマの影響を調査する。電極工具を高速回転させることで,被加工物との間に生じる相対速度と放電プラズマの滑り量を確認する。長パルスの単発放電することで放電プラズマの滑り量は観察可能と予想される。放電加工におけるプラズマの滑り現象が表面改質におよぼす影響を確認することができれば,表面改質における種々の材料選定が容易になると考えられる。
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Research Products
(2 results)