2016 Fiscal Year Research-status Report
車両の異質性を考慮した交通流の時空間ダイナミクスの理論構築と実証分析
Project/Area Number |
16K18164
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬尾 亨 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (90774779)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 交通工学 / 交通流理論 / 交通流モデル / 状態推定 / 移動体観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
交通流は道路を走る車両の集合体であり,個々の車両の挙動が全体のダイナミクス(例:渋滞伝播)に影響する.本研究の目的は,車両の異質性が道路交通流全体の時空間ダイナミクスに及ぼす影響の理論構築と実証である.その目的の達成へ向け,H28年度は交通流理論に関する先行研究の調査と体系化,車両の異質性を考慮した交通流の理論モデルの定式化と解析,交通状態・モデルパラメータ推定法の開発と検証を行った. まず,先行研究の調査と体系化として,交通流の基礎理論に関する最新の研究動向傾向を調査した.同時に,その逆問題である交通状態推定の方法論(枠組み・用いられるモデル・入力となるデータ)に関する包括的な調査をも行った.それぞれの結果をサーベイ論文として体系的にとりまとめ,今後の研究に当たって非常に有用な知見を得た.次に,異質性を考慮した交通流の理論モデルを,多車線・多クラス交通流を考慮したモデルを単純な仮定のもとで定式化し,数値実験によりその性質を分析した.最後に,交通状態・モデルパラメータ推定法として,異質性を考慮しない交通流について(異質性のある場合への拡張を念頭におき),GPSプローブカーに代表される移動体観測によるデータに基づき交通状態・モデルパラメータの変数を推定する手法を構築した.本推定手法の性質を大規模な実データを用い検証し,本手法自体の有用性や,異質性を無視したことに起因する限界を明らかにするなど,今後取り組むべき課題を明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の調査と体系化を重点的に行い,交通流理論と交通状態推定についてそれぞれサーベイ論文を執筆した.特に,交通状態推定のサーベイ論文は世界的にもこれまで存在しなかったが,今回海外の研究者と共著で執筆した論文が査読付国際ジャーナルへ掲載決定となった.これは期待を大きく上回る成果といえる. 一方で,当初は本年度中に完了させる予定であった交通流モデルの開発とその解析は,十分な完成度にあるとはいえない.具体的には,モデルは様々な仮定に基づいておりその妥当性が明らかでない点や,理論的性質に不明な要素が残っている点,数値計算手法の効率が悪い点などがある. このように,期待以上の進展と若干の遅れの両方がみられるため,総合的には本研究はおおむね順調に進展していると評価する.
|
Strategy for Future Research Activity |
H29年度は,まず交通流モデルの開発とその解析を進展させる.すなわち,先行研究の調査と体系化によって得られた知見をもとに,モデル自体の改良と効率的な数値計算手法の開発を行い,また実データに基づく検証を行う. そして,当初予定通りに本モデルを実データから推定する手法を構築する.これは,H28年度に開発した推定手法を拡張することで達成できると考えられる.
|
Causes of Carryover |
当初予定では,数値計算・データ処理用の計算機を購入予定であった.しかし,H28年度研究予定であった数値計算にあたっては,所属研究機関の所有する設備が十分な能力を有していたため,購入を見送った.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後,データ処理用の計算機が必要になることが見込まれるため,必要になった時点で購入する計画である.
|
Research Products
(8 results)