2016 Fiscal Year Research-status Report
Memory trace consolidated by new-born neurons
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16K18359
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂口 昌徳 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (60407088)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PTSD |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠と記憶の関係は古代から注目される大きな研究テーマであるが、未だに多くの謎が残されている。これまで様々な研究から、覚醒時に学習したことをその後の睡眠によって脳内に記憶として定着するというメカニズムが呈示されている。ここで、特にPTSDの病態において、記憶と睡眠の関連性を考える上で重要な示唆が得られる可能性がある。PTSDの症状としては、精神的外傷(トラウマ体験)の記憶が様々な形で蘇り、かつそれが患者に強い不安感情を惹起する。この症状が短期間で消失すれば急性ストレス障害となるが、PTSDではこの症状がこれが一ヶ月以上続く。また、多くのPTSD患者において繰り返される悪夢という症状が頻繁に観察される。PTSDの治療方法としては持続エクスポージャー療法という方法に高い治療効果が認められている。この治療の根幹には、患者を安全な状況でトラウマ記憶を思い出させ、それに馴れることによって、トラウマ記憶が引き起こす不安感から患者を開放するという考え方が有る。これは、おそらくトラウマ記憶ほどの衝撃が無い心理体験については、正常な状態でヒトが生理的に脳内で日常的に行っていることを、トラウマ記憶について治療介入しているものとも捉えられる。すなわち、これに似た脳内プロセスは正常のヒトでも睡眠中等に生じている可能性があるが、心理的衝撃が大きすぎてトラウマとなってしまうと、おそらく正常な処理が行えず、それが繰り返される悪夢として表出している可能性がある。これらは検証が困難な仮説であるが、その性質を上手く利用することで、新しい治療法を考察できる可能性がある。本年度発表した論文では、動物実験によって学習に用いた音刺激を、睡眠中に聞かせることで、その後、音に伴って生じる動物の不安行動を減少できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
睡眠の記憶におけるメカニズムを明らかにする観点から、本プロジェクトを推進する過程で様々な発見や洞察を得ており、その一部は前記の様に国際誌に原著論文として発表を行ったり、国内外の学会や、メディア等を通じで研究の進捗を発信している。本研究は様々なトランスジェニック動物を交配する必要があり、時間のかかる作業も幾つか存在するが、当初の計画通り順調に進行している。本研究を通じて、様々な共同研究が新たに立ち上がり、外部からこれまでに当研究室には使用不可能であった様々な技術も導入され、研究の質そのものが大きく向上していると考えられる。研究内容について未発表なデータが多く存在するため、詳細は差し控えるが、特にin vivo freemoving条件下でターゲットの神経回路の活動をイメージングできる技術について、外部の協力者から指導を得ながら研究室内でも力を入れて推進している。工学部出身の学生などのリクルートに成功し、自前で小型の脳内視鏡の作製にも成功しており、本プロジェクトに将来応用できることが期待される。多くの国内外の学会や研究会へ招聘を受け、研究の認知度も高まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、睡眠中における記憶固定化の神経回路メカニズムを明らかにしていく。来年度は特に、in vivo free moving の条件下でリアルタイムイメージングを可能にする、超小型脳内視鏡の運用を軸に、そのデータから機能介入実験に結びつけるための実験技術確立を目指す。当初はオプトロード技術をこの目的に使用する予定であったが、対象の神経回路を遺伝学的に同定しつつ選択的な神経回路ネットワークの解析を可能にするという観点から、脳内視鏡の技術をより重点的に進めることとする。また、将来この小型内視鏡を観察だけでなく特定の活動をする神経細胞だけをターゲットにした機能介入実験にも応用していく。このために特にMEMSミラーという特殊な小型ミラーを応用することを検討する。このミラーは直径が数mmと小さいため、マウスの頭部に固定する超小型顕微鏡にスキャンニングメカニズムを実装するにの非常に適している。スキャンニングメカニズムが実装できれば、イメージング画像内に出現する特定の神経細胞だけに光を当てることで、その活動を制御できる可能性が有る。この技術の完成のために、国内外の企業や研究者と連携し研究を進めていくこととする。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] The role of adult born neurons in memory consolidation during sleep-wake cycles2016
Author(s)
Kumar D, Hayashi M, Hayashi X, Changarathil G, Wintzer M, McHugh TJ, Sakurai T, Yanagisawa M, Sakaguchi M
Organizer
Society for Neuroscience
Place of Presentation
Convention Center, San Diego, USA
Year and Date
2016-11-12 – 2016-11-16
Int'l Joint Research
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[Presentation] Function of the adult-born neurons in memory consolidation during sleep2016
Author(s)
Masanori Sakaguchi, Masanobu Hayashi, Makoto Oishi, Xifang Hayashi, Boran Osman, Sima Singh, Marie Wintzer, Thomas J. McHugh, Takeshi Sakurai, Masashi Yanagisawa, Deependra Kumar
Organizer
RIKEN PDFA Pizza and Science Seminars
Place of Presentation
RIKEN BSI, 埼玉県和光市
Year and Date
2016-10-19
Invited
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[Presentation] 成体脳で新生するニューロンが、睡眠中の記憶の固定化に果たす役割り2016
Author(s)
坂口昌徳, Deependra Kumar, 林政信, 林細芳, Gopakumar Changarathil, Marie Wintzer, Thomas J. McHugh, 櫻井武, 柳沢正史
Organizer
成体脳で新生するニューロンが、睡眠中の記憶の固定化に果たす役割り
Place of Presentation
京王プラザホテル、東京都新宿区
Year and Date
2016-07-08
Invited
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[Presentation] The activity of adult born neurons are necessary for memory consolidation during sleep2016
Author(s)
Sakaguchi M, Kumar D, Hayashi M, Hayashi X, Changarathil G, Singh S, Wintzer M, McHugh TJ, Sakurai T, Yanagisawa M
Organizer
NCTC seminar
Place of Presentation
National Chiao-Tung Univ, Hsinchu, Taiwan
Year and Date
2016-05-26
Invited
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