2016 Fiscal Year Research-status Report
スプライシング因子SDE2によるヘテロクロマチン形成機構の解明
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16K18490
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大谷 淳二 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (10770878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スプライシング / ヘテロクロマチン / N末端則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではmRNAスプライシングとヘテロクロマチン形成のクロストークに注目し、分裂酵母においてヘテロクロマチン形成に必要なスプライシング因子であるSde2の役割について解析を進めた。分裂酵母のsde2破壊株においては、テロメア保護に重要な役割を果たしている因子であるrap1遺伝子を含む多くの因子のスプライシングに異常が出ていること、rap1のスプライシングの異常が、テロメアにおけるヘテロクロマチンの異常の主な原因であることを明らかにした。また、Sde2のN末端には進化的に保存されたユビキチン様タンパク質ドメイン、Ublがあるが、本研究における変異体解析から、Ublは細胞内でユビキチンと同様に、C末端のGGモチーフにおいて切断を受けていること、Ubl自体は必要ではないが、C末側断片の新生N末端が適切なmRNAスプライシングに重要であることが明らかになった。Ublを持つタンパク質は数多く知られているが、細胞内で切断を受け、露出される末端が重要になるという例は知られていない。さらに、新生N末端はリジン残基から始まっており、N末端則に従うと、短寿命であることが予想された。実際に、N末端則を司るユビキチンE3ライゲースであるUbr11に依存したSde2の分解が確認され、Sde2がN末端則の基質であることが明らかになった。また、Sde2タンパク質は窒素源枯渇時に大きく減少すること、ubr11遺伝子の破壊株では窒素源枯渇に応答したSde2タンパク質の減少が遅れることが明らかになり、N末端則によるSde2タンパク質の早い代謝回転が細胞外栄養環境の変化への応答に重要になっていることが示唆された。Ublの切断によって生じるN末端のアミノ酸配列は、進化的に非常に高度に保存されており、Sde2タンパク質のN末端則による分解も人においても保存されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではスプライシング因子であるSde2のヘテロクロマチン形成における役割を足がかりに、スプライシングとヘテロクロマチン形成のクロストークを明らかにすることを目的とした。しかし、分裂酵母におけるSde2のヘテロクロマチン形成への影響はほぼrap1遺伝子のスプライシングの異常による間接的なものであることが示されたため、スプライシング機構とヘテロクロマチン形成のクロストークに関しては解析を進めなかった。当初の主目的からは少しずれたが、Sde2のユビキチン様タンパク質ドメインのスプライシングにおける働きに関しては当初の予想以上の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
Ublの切断により露出されたSde2のC末側断片はN末端則を司るユビキチンE3ライゲースであるUbr11により認識され、Sde2タンパク質は常に分解を受けていることが示唆された。また、細胞外の栄養環境を変化させた際の、Sde2タンパク質レベルの素早い減少にUbr11が必要であることが明らかになった。今後は、これらの生化学的な性質の持つ、生物学的意義について検討したい。分裂酵母は窒素源枯渇への生理的な応答として、減数分裂を誘導することが知られているため、減数分裂の誘導に対するSde2, Ubr11の役割に注目して解析を行う。
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Causes of Carryover |
論文の投稿料などを計上していたが論文の投稿に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
自身の異動があったため、実験環境の整備に使う。
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