2018 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアー小胞体間の物理的結合を形成するERMES複合体の機能解明
Project/Area Number |
16K18534
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小島 理恵子 山形大学, 理学部, 研究員 (60769652)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ERMES / ミトコンドリア / オルガネラコンタクト |
Outline of Annual Research Achievements |
(今年度は,研究中断期間であったため,新たな進展はない。) 近年,異なるオルガネラ同士が膜コンタクトサイトを形成し,機能的に連携することが明らかとなり,その重要性と役割が着目されている。ミトコンドリア外膜と小胞体膜の一部を物理的に結合させるタンパク質複合体として同定されたERMESは,欠損すると酵母において強い増殖阻害を引き起こし,ミトコンドリアの形態やリン脂質組成に異常を示すことが分かっているが,その機能について明確なコンセンサスが得られていなかった。 我々はこれまでに,ERMESが小胞体からミトコンドリアへのホスファチジルセリン (PS)の輸送に直接的に関与していることを,独自に開発したin vitro PS transport assayを用いて明らかにした。昨年度は,ERMES構成因子であるMdm12の疎水性ポケットにリン脂質が結合することや,ERMES構成因子Mmm1-Mdm12複合体がリン脂質輸送のミニマムユニットとして機能することを,X線結晶構造解析やin vitro PS transport assayを用いてを明らかにし,その成果をJournal of Cell Biology誌に共著で発表した。また,酵母細胞やヒト培養細胞で,異なるオルガネラ移行シグナルをつけたSplit-GFPを発現させることで,異種オルガネラ膜間コンタクトを蛍光顕微鏡で観察するシステムを開発し,その成果をScientific Reports誌に共著で発表した。また,我々が昨年度までに同定したERMES欠損株の増殖阻害を回復させる4つのマルチコピーサプレッサー遺伝子のうち,機能未知のYgr250cについて,相互作用パートナータンパク質を免疫沈降法により同定するため,Ygr250cの大腸菌発現系構築を試みたが,発現は確認できるものの分解産物が多く,安定した精製産物を得られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間中に,ERMESが小胞体からミトコンドリアへのホスファチジルセリン (PS)の輸送に直接的に関与していることを,独自に開発したin vitro PS transport assayを用いて明らかにし,Scientific Reports誌に報告した。また,ERMES構成因子であるMdm12の疎水性ポケットにリン脂質が結合することや,ERMES構成因子Mmm1-Mdm12複合体がリン脂質輸送のミニマムユニットとして機能する ことを,X線結晶構造解析や我々が独自に開発したIn vitro PS transport assayを用いてを明らかにし,その成果をJournal of Cell Biology誌に共著で発表し た。また,酵母細胞やヒト培養細胞で,異なるオルガネラ移行シグナルをつけたSplit-GFPを発現させることで,異種オルガネラ膜間コンタクトを蛍光顕微鏡で 観察するシステムを開発し,その成果をScientific Reports誌に共著で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
我々が同定したERMES欠損株の増殖阻害を回復させる4つのマルチコピーサプレッサー遺伝子(Kojima et al., FEBS Lett., 2016)のうち,機能未知のYgr250c について解析を行う。Ygr250cのN末端には,フォールドやドメイン構造は不明であるが,保存された領域がある。そこで今年度は,この保存されたN末端領域の機能を調べる手がかりを得るために,X線結晶構造解析を用いてその立体構造を明らかにすることで,構造情報から機能解明につながるヒントを得たい。 上記の内容がうまくいかない場合は,ERMESのPS輸送に関する知見を深めたい。ERMES を欠損した細胞では,小胞体からミトコンドリアへのPS 輸送が減少するだけにとどまらず,野生株と比較して薄層クロマトグラフィーにおいて泳動度が遅いPSが合成されることが分かっている。そこで,この泳動度が低いPSの分子構造が何であるのかを,質量分析計を用いて調べ,ERMES が輸送機能以外にPSに与える影響について理解を深めたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
消耗品を購入する際に,端数が発生したため。
|
Research Products
(3 results)