2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18732
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 佳世 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 特任助教 (10757983)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二次木部形成の季節性 / 形成層活動 / 広葉樹環孔材 / 広葉樹散孔材 / 葉のフェノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
広葉樹の形成層細胞は様々な種類の二次木部細胞に分化する。本研究では、二次木部細胞の分化制御機構を解明することを目指し、広葉樹の形成層帯における植物ホルモンの量的分布パターンと二次木部細胞の形成位置との関連性を明らかにすることを目的とする。平成28年度は、実験1:一成長期における形成層活動および二次木部形成の季節性の解析、実験2:形成層帯における細胞・組織単位での植物ホルモン定量方法の検討、実験3:木部組織の3次元的可視化方法の検討、を行った。 道管の配列パターンが異なる広葉樹環孔材コナラ樹幹および散孔材ギンドロ樹幹における木部形成と葉のフェノロジーを一成長期にわたってモニタリングし、両者を同一時系列内で比較した。その結果、コナラおよびギンドロの形成層活動および木部形成の開始、休止時期、コナラにおける孔圏形成から孔圏外形成への移行時期を特定し、開芽・開葉および落葉との関連性を明らかにすることができた。また、コナラでは当年最初の形成層細胞分裂や分化中道管要素は局所的に認められるのに対し、ギンドロでは接線方向で同調して認められた。このことから、樹種によって当年最初の形成層細胞分裂や道管形成様式が異なっていることが示唆された。これらの成果は、形成層帯における植物ホルモンの量的分布パターンと二次木部細胞の形成位置との関連性を解析する上での重要な知見である。 休眠期コナラ成木から採取した師部、形成層、木部を含むブロック試料からオーキシン、ジベレリン、アブシジン酸を定量することができた。また、クリオスタットを用いて作製した柾目切片からもオーキシン、ジベレリン、アブシジン酸を検出することができ、凍結連続切片からの定量が可能であることが分かった。 また、連続切片から二次木部の組織構造を立体的に再構築するための手法の検討を行い、組織構造および水分通道経路を3次元的に可視化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の実験から、形成層活動および二次木部形成の季節性や春先の道管形成位置に関する知見が得られた。また、供試する樹種において植物ホルモンの定量が可能であることが分かった。今後の解析の基礎になるデータ、試料が揃ったので、おおむね順調に進んでいると考えている。 平成28年度は、道管の配列パターンが異なる広葉樹環孔材コナラおよび散孔材ギンドロ樹幹における形成層活動および木部形成の季節性の解析に重点を置いた。その結果、木部形成の季節性を明らかにするとともに、葉のフェノロジーとの関連性や春先の形成層細胞分裂再開・道管形成様式を明らかにすることができた。今後の内生植物ホルモンの量的分布パターンの解析に用いるブロック試料を採取することができた。植物ホルモンの定量方法の検討については、コナラにおいて定量が可能であることや切片からの定量が可能であることが分かった。定量条件の最適化、切片からの定量方法の効率化を継続して実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
自然条件下でのコナラ樹幹およびギンドロ樹幹の形成層帯付近における植物ホルモンの量的分布パターンおよびその季節変化を明らかにすることを目指す。まずは、連続切片からの定量条件の最適化、効率化を進める。平成28年度に採取した試料を用いて形成層帯付近における植物ホルモンの量的分布パターンの解析を行う。また、植物ホルモンの量的分布パターンと形成層活動および木部形成の季節変動とを同一時系列内で比較し、両者の関連性を明らかにする。 植物ホルモンの量的分布パターンと二次木部細胞の形成位置との関連性を解析するための新たな実験系を作出するために、特異的な二次木部細胞形成を人為的に誘導する条件を明らかにする。木部形成に重要な役割を果たすと考えられているオーキシンとジベレリンに着目し、春先の樹幹へのオーキシン移動阻害剤塗布処理およびジベレリン生合成阻害剤投与処理が木部形成に与える影響を明らかにする。すでに野外での実験、試料採取を終えており、顕微鏡を用いた観察、解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
凍結連続切片の作製方法や定量条件等の植物ホルモン定量方法の詳細検討に時間を要したため、予定していた植物ホルモンの定量実験を次年度に本格的に実施することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
定量する植物ホルモンの内部標準の購入代に充て、形成層帯付近における植物ホルモンの量的分布パターンの解析を進める。
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