2016 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the mechanism to regulate protein localization by EPA and DHA
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16K18755
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
山田 秀俊 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 主任研究員 (70511955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EPA / DHA / メラノーマ / メラニン / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EPAによるメラノーマ細胞株(B16F10)白色化およびDHAによるメラノーマ細胞増殖抑制の作用メカニズム解明を目指している。EPA・DHAがRanBPやexportinと結合するという事実から、メラニン合成と細胞増殖に関わるタンパク質の局在変化に着目して研究を進めている。 EPAによるメラノーマ細胞の白色化は、メラニン合成の律速酵素であるTyrosinase(Tyr)に着目し解析を行ったが、Tyrの細胞内局在、蛋白質量、mRNA発現量に変化は観察されなかった。そこで、メラニン合成に関わる第2の酵素Tyrosinase Related protein(TRP1)の細胞内局在について検討した。TRP1もTyr同様に膜タンパク質であり、メラノソーム膜に局在しメラニン合成に機能する。TRP1抗体を用いた免疫染色を行ったところ、EPA添加培地で培養したB16F10細胞において、細胞膜付近に局在しているTRP1の減少が確認された。つまり、EPAよるTRP1の膜輸送抑制がメラニン低下の原因であると考えられた。 DHAによる細胞増殖抑制は、がん遺伝子H-Ras、K-Rasに着目し解析したが、DHAよるRas蛋白質の細胞内局在変化は観察されなかった。そこで、DHAによる細胞増殖抑制の原因を探るため、ヒトメラノーマ細胞株:Colo 679およびG361を用いて、トランスクリプトーム解析を行い、DHAによって変動する27の遺伝子を探索した。さらに、real-time PCRにて再現性を確認した結果、DHA添加によってmRNA発現が増加する27の遺伝子を明らかにした。DHAによって発現が誘導される遺伝子は、HIF1A, MYC, ATF4, TP53, NF-kBによって発現が誘導される遺伝子であったことから、DHAによってこれら転写因子の活性化が起きている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画でEPAおよびDHA主なターゲットと推察していたTyrosinaseおよびRasには細胞内局在等に変化が観察されなかったことから、EPAによるメラニン量低下およびDHAによるメラノーマ増殖抑制の標的分子および標的シグナル経路の再検討を行った。その結果、EPAによってTRP1の細胞膜局在が抑制されること、DHAによってメラノーマ細胞株でHIF1A, MYC, ATF4, TP53, NF-kB関連遺伝子の発現が増加することを見出した。これらの結果はこれまでに報告されていない新たな知見であり、EPAによるメラニン量低下およびDHAによるメラノーマ増殖抑制の分子メカニズム解明につながる重要な知見である。 今後はTRP1、HIF1A、MYC、ATF4、TP53、NF-kBの細胞内局在変化に着目し解析することで、EPA・DHAによる蛋白質局在制御調節機構の解明につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EPAによるメラニン抑制はTRP1の細胞内局在変化メカニズムの解明に取り組む。特に、TRP1の膜輸送に必須のRab32/38との複合体形成に着目し解析を行う。DHAによるメラノーマ細胞増殖抑制はHIF1A、MYC、ATF4、TP53、NF-kBの細胞内局在変化に着目し解析を行い、DHAによる細胞増殖抑制のメカニズム解明に取り組む。さらに、EPA・DHA結合蛋白質の探索を行い、EPA・DHAによる蛋白質局在制御調節機構の解明を目指す。
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