2017 Fiscal Year Research-status Report
水田流域水環境における水理・熱環境・窒素動態の統合解析
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16K18770
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 匡臣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80725664)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水田流域 / 熱環境 / 田面水 / 水環境 / UAV / PIV / 熱画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
田面水の平面2次元流れ場を計測するための模型水田実験装置において流れを可視化する方法を検討し,平面流速分布の計測手法を確立した.高さ約1mの架台の上に設置した透明アクリル製の実験装置の下方よりブラックライトを照射させ,トレーサーとしてポリエチレン粉末を水面上方より撒布し,暗幕で周囲を覆うことで,遅い流れ場の可視化に成功した.撮影した画像を基に,PIV(粒子画像流速測定法)を活用して流速分布を求めることで,田面水の平面2次元流計算モデルの検証に用いる流れ場の実験結果を取得した. 稲株群による流れへの抵抗を考慮した平面2次元流数値計算モデルを作成し,稲株の密度や太さによる抵抗力の違いを推定するためのアルゴリズムを構築した.稲株周囲の流れ場の再現には非構造格子を用いた有限体積法を応用し,水田全体の流れ場の計算モデルには構造格子によるSIMPLE法を用いた. 観測対象水田を新たに追加し,田面水の水深や水温の平面分布,各種気象データを取得した.さらに,水口・水尻における田面水を定期的に採水し,栄養塩濃度(全窒素,硝酸・亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,全リン,リン酸態リン,全有機体炭素)の経時変化についてのデータを取得した. UAVおよびサーマルカメラを用いて,上空から水田の熱画像を取得する手法を確立した.茨城県つくば市,富山県立山町の水田圃場において,UAVの飛行および熱画像の取得を複数回試行し,撮影に適した高度や飛行ルート,オーバーラップ率等について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模型水田実験装置における平面2次元流の可視化および流速の計測に成功した.これまでに構築した,稲株群による流れへの抵抗を考慮した平面2次元流数値計算モデルによる計算結果との比較を行い,浅水流方程式の適用可能性について検討した. 観測対象水田を新たに追加し,水深・水温分布や気象データの取得,水口・水尻における田面水中の栄養塩の連続的な測定が順調に進んでいる.UAVおよびサーマルカメラを用いた水田上空からの熱画像の撮影にも成功し,データは順調に蓄積されつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した,稲株群による流れへの抵抗を考慮した平面2次元流数値計算モデルと,大気-植生-田面水-地中間の鉛直方向熱輸送モデルを組み合わせることにより,水田内の温度環境分布のシミュレーションモデルを完成させる.観測対象水田において上空から撮影した水田の熱画像および,各種のセンサーロガーを用いて収集した水田内の温度環境分布の観測結果を用いて,構築するモデルの精度や適用性の検証を実施する.さらに,水田内の熱環境分布計算モデルを応用し,窒素濃度分布の計算モデルの開発にとりかかる.
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