2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18939
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 俊作 京都大学, 医学研究科, 特定職員 (50721916)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 薬剤性腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 薬剤による尿細管間質性腎炎の実態調査 薬物による尿細管間質性腎炎に関して、研究課題としてこれまで顧みられることが乏しかった背景として、その発祥頻度が低いことに加えて、臨床における実態が不明であったことが一因として考えられた。そこで、医薬品副作用データベースを用いて、尿細管間質性腎炎の被疑薬の特徴を検索した。その結果、自己免疫疾患を背景に有する場合に発症頻度が高いことが示され、腎臓外の炎症が薬物による尿細管間質性腎炎に寄与することが示唆された。
2. 薬物による尿細管間質性腎炎を再現する実験モデル動物の確立 申請者は初めに、薬物による尿細管間質性腎炎の発症には、腎毛細血管透過性の増大と活性化T細胞の腎への浸潤が関与することを想定した。そこで、ロキソプロフェンをモデル薬物として用い、活性化T細胞との同時処置により、マウスにおいて尿細管間質性腎炎を再現する動物モデル作製を目指した。しかし、本実験系ではロキソプロフェンによる尿細管間質性腎炎は成立せず、モデル動物作成方法の変更が必要となった。 上述の実態調査から、自己免疫疾患と薬物による尿細管間質性腎炎の関連が疑われたため、自己免疫疾患様のモデル動物にロキソプロフェンを投与することとした。本年度は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発した大腸炎モデルを用いて、ロキソプロフェンの腎への作用を検討した。その結果、ロキソプロフェンとDSSの共処置によって腎臓内におけるIL-6やCCL2といった炎症性サイトカインの発現量が上昇することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、本年度の目標として、薬物による尿細管間質性腎炎を再現する実験モデル動物の確立、尿細管間質性腎炎を引き起こす薬物が有する特徴の同定、及び薬剤による尿細管間質性腎炎に関する実態調査としていた。薬物による尿細管間質性腎炎に関する課題としては、その発症機序が未解明であるとともに、臨床における実態が不明であることがあった。そこで、実態調査については、その結果がすぐに有益となることも期待されたため、初めに医薬品副作用データベースを用いた調査を行なった。その結果、尿細管間質性腎炎を発症しやすいと考えられる医薬品を同定することができたとともに、尿細管間質性腎炎を発症した症例に共通した特徴を見いだすことができた。これらの結果は、当初想定していた以上であったと考える。 一方、薬物による尿細管間質性腎炎を再現する実験モデルについては、初めに、ロキソプロフェンをモデル薬物として用い、活性化T細胞との同時処置により作製を目指した。しかし、本実験系ではロキソプロフェンによる尿細管間質性腎炎は成立せず、モデル動物作成方法の変更が必要となった。そこで、腎外から腎臓へ浸潤するT細胞の由来を炎症が起こった遠隔臓器であることを想定し、大腸炎モデルマウスに着目した。すなわち、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発した大腸炎モデルを用いて、ロキソプロフェンの腎への作用を検討した。その結果、ロキソプロフェンとDSSの共処置によって腎臓内におけるIL-6やCCL2といった炎症性サイトカインの発現量が上昇することを見出した。本項目の進捗は、当初の目標から下回るものであるが、発症機序が全く不明であった尿細管間質性腎炎に関しては一定の新知見を得られたものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は以下の項目について検討を進める。 1. 薬物による尿細管間質性腎炎を再現する実験モデル動物の確立(ロキソプロフェンが腎間質への白血球およびリンパ球の浸潤へ及ぼす影響の評価、腎臓から単離した尿細管上皮細胞及び線維芽細胞を用いた細胞生物学的解析、及び、症状の可逆性や薬物曝露量への依存性に関する解析) 昨年度に新たに見出されたDSS誘発性腸炎モデルにおいて薬物による尿細管間質性腎炎を解析する。また、薬物による尿細管間質性腎炎は、早期に発見し原因となる薬物を中止することによって、回復可能と考えられている。そこで、薬物の処置によって尿細管間質性腎炎を引き起こした際に、症状の可逆性を実証する。また、種々曝露量のロキソプロフェンを用いることで、尿細管間質性腎炎発症の用量依存性を解析する。 2. 尿細管間質性腎炎を引き起こす薬物が有する特徴の同定 平成29年度には、疾患モデルとして決定したマウスを用いて、種々薬物によって尿細管間質性腎炎の起こりやすさが異なるかを検証する。この際に、各薬物の腎への影響に関する陽性対照として、腎細胞のアポトーシスや血管透過性を調べ、疑陰性の結果を排除するように工夫する。 3. 薬剤による尿細管間質性腎炎に関する実態調査 データベースを用いた研究では、異なるデータソースでの再現性も必要とされる。昨年度は本邦における副作用について調べたため、本年度は米国及び欧州における実態についても調査を継続する。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では物品費として1000千円を計上していたが、モデル動物作成に関する検討において予期せぬ結果が得られたこともあり、腎障害の解析に用いることを予定していた費用について計画と実際の使用額に差が生じた。このことが、次年度使用額が生じた大きな理由と考える。しかしながら、新たな仮説からモデル構築を進めた結果、尿細管間質性腎炎のモデルを作製することができた。そのため、2年間での計画としては、当初想定していた通りの解析を必要とすることが見込まれ、本年度に必要な金額と考える。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は次年度使用額を合わせて約1950千円の使用を計画している。平成29年度には、当初計画どおりに、細胞生物学実験に係る消耗品費及び動物実験関連消耗品費(450千円)、実験用動物の購入経費(410千円)を計上するとともに、腎臓に浸潤したリンパ球及び腸管リンパ球のDNAマイクロアレイ解析に400千円を計上する。また、国内における学会発表及び海外における学会発表にかかる旅費(350千円)、及び、動物の飼育管理や病理標本の解析に対して費用(340千円)を計上する。
|
-
-
-
-
[Journal Article] Disruption of Slc52a3 gene causes neonatal lethality with riboflavin deficiency in mice.2016
Author(s)
Yoshimatsu H, Yonezawa A, Yamanishi K, Yao Y, Sugano K, Nakagawa S, Imai S, Omura T, Nakagawa T, Yano I, Masuda S, Inui K, Matsubara K.
-
Journal Title
Sci Rep
Volume: 6
Pages: 27557
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-