2016 Fiscal Year Research-status Report
新規膜貫通タンパク質Teneurin-4による、間葉系幹細胞の移植効率評価
Project/Area Number |
16K19191
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
須藤 絵里子グレース 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, プロジェクト助教 (60748367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 純化 / Teneurin-4 / フローサイトメーター / 移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Teneurin-4(Ten-4)がMSCに及ぼす影響とその機序を分子レベルで解析し、Ten-4発現量の異なるMSCを軟骨欠損モモデルへ移植することによって、Ten-4がMSCの幹細胞能力を反映するサロゲートマーカーとなる可能性を検討する。 動物への幹細胞移植により移植効果とTen-4発現の関連を評価した上で、将来的にはTen-4をサロゲートマーカーとした純化MSC移植の臨床応用を目指していることから、本研究での移植時に使用する動物(マウスやラット)のMSCが、ヒトMSCと同等のものである必要がある。そこで新たな課題として挙げられたのが、動物種共通のMSC純化マーカーの探索である。既存のMSC純化法では、ヒト、マウス、ラット間で異なる細胞表面抗原マーカーを使用しなければならず(ヒト:LNGFR/THY-1共陽性、マウス:PDGFRa/Sca-1共陽性、ラット:未解明)、必ずしも同等のMSCとは言えないという問題点がある。とくに、ラットを用いたMSCの移植はこれまで多くの研究で行われていたが、それらはMSCを含んだ雑多な骨髄細胞集団を使用しており、ラットMSCの純化分離法は未解明であった。 本研究の平成28年度はまずラットMSCを純化分離する細胞表面抗原マーカーを同定し、さらに当該マーカーによってヒト、マウスのMSCをも分離することが可能であることを明らかにした(特許申請につき、不記載)。ヒト、マウス、ラットのMSCが同じ細胞表面抗原マーカーによって純化分離できるという報告はこれまでに無く、平成28年度の大きな研究成果である。さらに当該マーカーにより純化されたMSCは雑多な骨髄細胞集団に比べ高いTen-4の発現を示したという結果は、Ten-4がMSCの維持に重要な役割を担っていることを意味すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は野生型マウスやTen-4欠損マウスを用いて、Ten-4のMSC未分化維持における機能解析、Ten-4下流因子の探索、さらにはTen-4発現をサロゲートマーカーとした軟骨欠損部への移植細胞の生着度の評価を行うことを計画していた。しかし、マウスの軟骨欠損部への移植は、マウス骨組織のサイズを考慮するとひじょうに困難であることが明らかとなり、ラットへの移植が代替策として考えられた。さらには将来的な臨床応用の可能性を考慮すると、ヒトにも通用する共通のMSC純化マーカーの使用が求められ、動物種共通のMSCマーカーを探索する必要が生じた。 そこで、平成28年度はまず始めに複数の細胞表面抗原マーカーの中からスクリーニングを行い、ヒト、マウス、ラットMSCで共通に発現するMSC純化マーカーの同定を試みた。さらに、その純化マーカーによって分離されたMSCが高いTen-4発現を示すことを明らかにした。 当初の予定ではマウスMSC(PDGFRa/Sca-1共陽性)を用いてTen-4の機能解析を進めて行く予定であったが、将来的にヒトMSCを用いて応用する際、同一マーカーによって分離されたMSCを用いて解析するのが望ましい。従ってMSC未分化維持におけるTen-4の機能解析や下流因子の探索の進捗はやや遅れているが、共通の純化マーカーによるMSCの分離が可能になったことで、本研究がより円滑に進んでいくと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果により、ヒト、マウス、ラット共通のMSC純化マーカーを同定することに成功した。さらに当該マーカーにより純化されたMSCがTen-4を有意に高く発現していることが明らかとなった。平成29年度以降は、Ten-4発現量の異なる細胞のラットへの移植を試み、移植部への生着度とTen-4発現量の相関をみる。さらに、Ten-4欠損MSCの未分化維持状態や軟骨分化過程において発現減少あるいは増加している遺伝子をマイクロアレイによって網羅的に解析する。網羅的解析により減少が明らかとなった因子を添加することで、MSCの機能をレスキューできるのか、生着・再性能を回復できるのかなどを明らかにする。平成28年度の研究成果により明らかとなった動物種共通MSC純化マーカーとTen-4の関連を明らかにすることで、Ten-4もがヒト、マウス、ラット共通のMSCの新規MSC純化マーカーとなりうる可能性を探索する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究成果を平成29年度に海外の学術論文に投稿する予定であり、出版料の確保および研究成果の海外学会での発表のため、資金を平成29年度予算に補填する必要があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に海外の学術論文への投稿するため、さらには本研究の成果を国際学会にて発表するために使用する。
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