2016 Fiscal Year Research-status Report
子どもにおける有機リン・ネオニコチノイド系農薬の日常曝露とADHD傾向との関係
Project/Area Number |
16K19244
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西原 進吉 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (10584344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農薬曝露 / ADHD / 神経発達 / 有機リン / ネオニコチノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,わが国では,1971年に規制された有機塩素系農薬の代替農薬として,有機リン系農薬やネオニコチノイド系農薬が使用されている。有機リン系農薬については,胎児期や出生後の農薬への曝露が,神経発達と関連するという報告がなされているものの,結果は一貫しておらず,特に本研究のテーマとなっている時のADHD等の注意関連機能に対する影響については,研究数が少なく,ほとんど明らかになっていない。また,ネオニコチノイド系農薬に関しては,近年,その使用量が増大しているにもかかわらず,神経発達との関連を検討した研究自体がほぼ存在しない。 本研究は,学童期の児の尿から,有機リン系農薬・ネオニコチノイド系農薬の代謝物を測定することで学童期の児の曝露状況を評価する。そして,その濃度が児のADHD傾向と関連するか否かを検討することを目的としている。 本研究では,H28年度末までに,有機リン系・ネオニコチノイド系農薬の代謝物を測定する尿検体,および,ADHD傾向を測定するADHD-RSやConners3の情報をすべて収集済みである。 H29年度は,当初の計画通り,収集された尿検体から有機リン系・ネオニコチノイド系農薬の代謝物を測定し,ADHD傾向との関連について解析を行い,論文を執筆する。 本研究で得られた結果を迅速に論文として発表するために,昨年度中に,農薬と神経発達に関する疫学の研究動向をレビューし,総説として学術雑誌に投稿した。同総説は既に公刊されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,7歳の子どもの尿から,有機リンやネオニコチノイド系農薬の代謝物を測定し,尿中の農薬代謝物濃度とその子のADHD傾向との関連についての検討を行うことである。 上記の目的を達成するには,(1)尿検体の収集,(2)児のADHD傾向についての情報収集,(3)尿検体中の農薬代謝物の測定,(4)結果の解析と公表(論文執筆)という段階を踏む必要がある。 現段階では,上記の(1)と(2)がすべて完了しており,現在は(3)の測定を実施するための検体のセレクションを行っている。 また,本研究結果の公表に先立ち,現在世界で実施される農薬とADHDの関係についての研究のレビューを行い,先行研究における知見や問題点に関する整理を試みた。その内容は,総説として学術雑誌に投稿し,既に公刊されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,収集され凍結保存されている7歳児の尿検体から,有機リン系・ネオニコチノイド系農薬の濃度を測定する。 測定する物質・代謝物は,有機リン系(DMP, DEP, DMTP, DETP, DMDTP, DEDTP),ネオニコチノイド系(DIN, NIT, THM, IMI, CLO, IM-2-1, ACE, THD)のうちのいずれかである。 測定は,H29年12月末までに完了予定である。 アウトカム(ADHD傾向)に関する情報はすでに収集済みであり,データ整理も完了しているので,代謝物の測定結果が揃った段階で,統計解析を実施し,ADHD傾向との関連を検討し,論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
本研究計画において,一番予算を要するのが尿検体からの農薬代謝物測定費である。H28年度は,測定を実施せず,H29年度に測定をまとめて実施することになったために次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度に,尿検体から農薬の代謝物濃度測定を実施する。差額分はほとんどすべて測定費用として使用する計画である。
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