2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19738
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大内 健嗣 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30528419)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ランゲルハンス細胞 / Langerin陽性真皮樹状細胞 / CD326 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚および皮膚所属リンパ節において各樹状細胞サブセットにおけるCD326分子の発現および局在を明らかにした。C57 BL-6マウスの体幹皮膚を表皮、真皮に分離した後、それぞれを酵素処理して細胞浮遊液を作成しフローサイトメトリで解析した。また、マウスの皮膚所属リンパ節も同様に解析した。皮膚由来の樹状細胞はLangerin、CD11b、CD 103分子の発現パターンによって5種類のサブセットに分類が可能であった。我々はLangerin+ CD11b+;ランゲルハンス細胞(以下、LC)、Langerin+ CD11b- CD103+;Langerin陽性真皮樹状細胞(以下、langerin+ dDC)に注目した。LCは表皮、真皮、リンパ節内でもCD326分子を強発現していた。Langerin+ dDCは真皮においてCD326分子を弱発現し、遊走した皮膚所属リンパ節内においてその発現を増強することを見出した。次に共焦点顕微鏡による皮膚樹状細胞サブセットの局在解析を行った。マウスの耳介より採取した皮膚を使用し、チオシアン化アンモニウムを使用して表皮を剥離し真皮シートとして抗Langerin、抗CD326、抗CD103抗体を用いた多重染色を行って染色した。抗CD103抗体を用いた染色は成功していないが、langerin+ dDCが毛嚢周囲に多く認められる知見が得られている。最後に経皮的な免疫応答の解析の手段として遺伝子銃を用いた経皮的genetic immunizationの実験系が機能するかを検討した。β-galactosidaseをコードするプラスミドDNAをコーティングされた金粒子を用いてマウスの剃毛した腹部に遺伝子銃を用いて免疫を行った。免疫1週間後に抗原特異的なIgGをELISA法を用いて測定したところ、抗原特異的な液性免疫応答が得られていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点顕微鏡による皮膚樹状細胞サブセットの局在解析の点では、電子顕微鏡レベルで樹状細胞を同定するため、post-embedding法での免疫電子顕微鏡を試行した。具体的にはC57 BL-6マウスの耳介より採取した皮膚をpost-embedding免疫電顕の基質として使用した。検体を1mm以下程度の大きさに切りだし、-190℃に冷却した液体プロパン中に急速に投入し凍結固定する。-80℃下でメタノールにより凍結置換を行った。その後、-60℃下でLowicryl K11Mにて樹脂包埋し、紫外線重合によりブロックを作成した。超薄切片を作成したのち、1次抗体と反応後、15nm以下の金コロイド標識2次抗体を反応させ透過型電子顕微鏡にて観察した。しかし、アーチファクトが強い検体不良、および抗体の染色性不良があり、詳細な観察が困難であったため、免疫電子顕微鏡は技術的なハードルが高いことがわかった。しかし、前述の通り共焦点顕微鏡による多重染色で表皮、真皮共に樹状細胞の局在が解析可能であった。平成29年度以降に予定している経皮的な免疫応答の解析に用いる経皮的genetic immunizationの実験系、かつOVA(chicken ovalbumin)を皮膚に外用する経皮免疫の実験系も機能することが確認できており、来期の研究計画を前倒しして開始できている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き共焦点顕微鏡による多重染色を用いて、表皮、真皮、所属リンパ節における樹状細胞の局在を解析する。抗CD103抗体を用いた染色は成功していないため、Biotinをコンジュゲートした抗CD103抗体で検体を染色し、蛍光標識ストレプトアビジンによって検出を試みる。LC およびlangerin+ dDCの密着像が認められれば、例えば皮膚においては毛嚢周囲なのか血管周囲なのか、皮膚所属リンパ節ではT細胞領域なのかなど、位置情報を詳細に確認する。平成29年度は骨髄移植による皮膚樹状細胞サブセット特異的な4種類のCD326分子ノックアウトマウス(グループ1;LC、langerin+ dDCともにCD326を発現、グループ2;LCのみがCD326を発現、グループ3;langerin+ dDCのみがCD326を発現、グループ4;LC、langerin+ dDCともにCD326を発現しない)作成する予定である。このノックアウトマウスが作成できしだい、遺伝子銃を用いた経皮的genetic immunizationによる免疫を行い、抗原特異的なIgGサブクラスをELISA法を用いて測定し、CD326分子の選択的欠損が液性免疫反応に与える影響を解析する。遺伝子銃を用いた免疫後、T細胞性免疫にあたえる影響を解析するために、所属リンパ節におけるIL-4(Th2型サイトカイン)およびIFN-γ(Th1型サイトカイン)のメッセンジャーRNAのレベルをPCR法によって検討する。OVAを皮膚に外用した場合、LCによって抗原特異的IgG1産生(Th2型液性免疫反応)が誘導される事が分かっている。そこで、経皮的genetic immunizationと並行して、上記で作成した骨髄移植マウスにOVAを1週間間隔で2回経皮免疫し、抗OVA特異的IgGのサブクラスをELISA法を用いて詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
使用予定であった抗体などは、過去に購入した抗体を使用することでまかなうことができた。また購入予定であったELISA用抗体などは在庫不足であったため、翌年度に購入することになった。全体的に効率よく物品調達を行うことができたため、未使用金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ELISA用抗体、染色用抗体、フローサイトメトリー用抗体を今後購入予定である。また、電子顕微鏡検体を作成するためにダイアモンドナイフを購入する予定である。
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