2017 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症死後脳におけるオリゴデンドロサイト/ミエリンの神経病理学的研究
Project/Area Number |
16K19759
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 洋太 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (90754945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / オリゴデンドロサイト / ミエリン / 死後脳 / 神経病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、統合失調症の長期罹患例にて、上側頭回、海馬CA3におけるmyelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)の分布の変化、神経線維ごとのMOGの発現の減少を明らかとし、同様の所見を稀なゲノム変異を同定した死後脳(カルボニルストレス系ゲノム変異、 22q11.2 欠失、MBD5欠失を伴う統合失調症死後脳等)のなかでも、22q11.2欠失統合失調症死後脳において認められることを確認していた。 平成29年度は、MOG 以外のオリゴデンドロサイト/ミエリン関連タンパクのうち、Nogo-Aに着目し、統合失調症死後脳および稀なゲノム変異を同定したヒト死後脳(平成28年度の結果から特に22q11.2 欠失統合失調症死後脳)にて、形態学的所見の検討を行った。22q11.2欠失の欠失領域はNogo-Aの受容体を包含している。 結果、22q11.2欠失統合失調症の剖検脳における上側頭回の白質では、稀な遺伝子変異のない統合失調症と比較して、Nogo-A陽性オリゴデンドロサイトの密度が減少し、22q11.2欠失が、統合失調症患者の剖検脳において上側頭回のオリゴデンドロサイト/ミエリンの変化に関連していることが示唆された。Nogo-A陽性神経細胞は、22q11.2欠失統合失調症死後脳の上側頭回皮質第III層において、稀な遺伝子変異のない統合失調症と比較して、増加していたが、病態との関連はさらなる検討を必要とする。 DISC1KOマウスに関しては、統合失調症の病態とDISC1との関連をより明確にするために、Neuropeptide Yについて検討した。 症例数増加のために、引き続き死後脳の収集をおこない、稀な遺伝子変異を持つ統合失調症(X染色体に5.1Mbのサイズの重複。重複領域には、HTR2C、PAK3などの重要な遺伝子を有する)の死後脳を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)以外のオリゴデンドロサイト/ミエリン関連タンパクの形態学的変化を、統合失調症死後脳及び統合失調症に強く関与するゲノム変異を同定したヒト死後脳で免疫組織学的、神経病理学的に検討することを計画していた。平成28年度までに行った研究をもとに、22q11.2欠失における欠失領域が関連しうるオリゴデンドロサイト/ミエリンの病態に着目し、抗Nogo-A抗体を用いた免疫組織学的、神経病理学的検討により、22q11.2欠失統合失調症死後脳と稀な変異のない統合失調症との比較から、22q11.2欠失が、統合失調症患者の剖検脳において上側頭回のオリゴデンドロサイト/ミエリンの変化に関連していることを示唆する観察所見を見出した。今回観察した所見は神経画像や分子生物学的研究結果の実際の組織上の変化を捉えていると考えられる。 本研究では、一般的な統合失調症死後脳で検討を行うだけでなく、発症に強く関与するゲノム変異を同定したヒト死後脳や遺伝子改変モデル動物でも、統合失調症死後脳と同様の所見が観察されるか適時参照することを方法論の一つとしているが、前年度までの結果から、観察領域、主に観察すべき対象・背景に想定しうる病態、観察候補となるオリゴデンドロサイト/ミエリン関連タンパクを絞り込み、実際の統合失調症死後脳において、疾患病態に関連しうると考えられるオリゴデンドロサイト/ミエリンの変化を観察することが出来た。また、症例数増加のための死後脳収集および収集脳の一般病理学的所見の検討も適宜行い、新たに、稀な遺伝子変異を持つ統合失調症(X染色体に5.1Mbのサイズの重複。重複領域には、HTR2C、PAK3などの重要な遺伝子を有する)の死後脳を見出した。これらのことから、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
従前の精神疾患死後脳の臨床場面でのリソース蓄積は極めて困難な背景を鑑みて、平成28年度、平成29年度から引き続き、死後脳の収集を行い、例数を増やすことは継続する必要がある。新たに収集を行った死後脳は、適宜、神経変性疾患の有無の検討を行う。 平成28年度、平成29年度に引き続き、オリゴデンドロサイト/ミエリン関連タンパクの免疫組織化学染色、形態学的所見(分布、面積、数、密度など)の検討を行う。平成28年度、平成29年度と、myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG)による検討の結果から、22q11.2欠失に焦点をあて、統合失調症の病態に関与するオリゴデンドロサイト/ミエリンの変化を観察してきた。大きな研究計画の変更はないが、平成30年度は、カルボニルストレス系ゲノム変異を有する統合失調死後脳にもより焦点をあて、免疫組織学的検討を中心に、古典的神経病理学的観察も含めたオリゴデンドロサイト/ミエリンの神経病理学的検討を行う。 モデル動物における検討の意義は、オリゴデンドロサイト/ミエリンの形態学的所見と病態との関連をより明確にすることに加え、適時、モデル動物での形態学的所見を参照することで、統合失調症死後脳で疾患に特異的な所見の観察を行いやすくすることにある。現在、統合失調症死後脳、稀な遺伝子変異を有する統合失調症死後脳を中心とした神経病理学的検討により、統合失調症の病態に関与すると推量されるオリゴデンドロサイト/ミエリンの形態学的所見を見出すことが出来ているが、統合失調症死後脳で特徴的な形態学的所見を見出すことが困難な際は、モデル動物での解析をまず行い、その結果を参考に、同様の所見を統合失調症死後脳で検索する方策をとる。
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Causes of Carryover |
(理由) 新たに解析を行うべきヒト死後脳が年度後半に追加で生じた。当該脳の組織管理及び免疫組織化学染色に必要となる消耗品費を次年度に繰り越すこととした。 (使用計画) 脳組織管理、免疫組織化学染色の消耗品費として使用する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] The neuropathological study of myelin oligodendrocyte glycoprotein in the temporal lobe of schizophrenia patients.2018
Author(s)
Marui T, Torii Y, Iritani S, Sekiguchi H, Habuchi C, Fujishiro H, Oshima K, Niizato K, Hayashida S, Masaki K, Kira J, Ozaki N.
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Journal Title
Acta Neuropsychiatr.
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 名古屋大学精神科ブレインバンクにおける発症年齢と神経変性疾患の頻度に関する検討2017
Author(s)
藤城 弘樹, 関口 裕孝, 鳥居 洋太, 羽渕 知可子, 平野 光彬, 三輪 綾子, 合澤 祐, 岩田 拡, 岩井 清, 藤田 潔, 三室 マヤ, 岩崎 靖, 尾崎 紀夫, 吉田 眞理, 入谷 修司
Organizer
第36回日本認知症学会学術集会
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[Presentation] ハンチントン病死後脳から抽出したゲノムで確認したCAGリピート数と臨床症状の関係2017
Author(s)
平野 光彬, 入谷 修司, 藤城 弘樹, 鳥居 洋太, 羽渕 知可子, 岩田 拡, 関口 裕孝, 吉見 陽, 粉川 進, 藤田 潔, 三室 マヤ, 岩崎 靖, 吉田 眞理, 尾崎 紀夫
Organizer
第36回日本認知症学会学術集会
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[Presentation] ハンチントン病における精神症状先行群と運動症状先行群の臨床的特徴の検討2017
Author(s)
平野光彬, 尾崎紀夫, 入谷修司, 藤城弘樹, 鳥居洋太, 関口裕孝, 羽渕知可子, 合澤祐, 三輪綾子, 三室マヤ, 岩崎靖, 岩井清, 粉川進, 藤田潔, 吉田眞理
Organizer
第113回日本精神神経学会学術集会