2018 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療後認知機能障害:MRIによる脳微細変化検出に基づく病態解明とリスク診断
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16K19802
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 麗 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90769960)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小児癌 / 放射線治療 / 遅発性認知機能障害 / 脳微細構造変化 / MR imaging |
Outline of Annual Research Achievements |
頭蓋内照射後の小児がん生存者の40-50%に遅発性認知機能障害が生じ、学習障害、記憶障害、人付き合い困難、行動適応障害、長期にわたる教育・職業上の障害に苦悩している。Sugiyamaらによれば、頭蓋内放射線治療を受けた患者の大学進学率は約50%程度であり、ほとんどが無職か、一度就職したものの最終的に離職している。本研究は、小児がん頭蓋内放射線照射後10年以上経過した症例を対象とし、脳微細構造変化の検出できるMRI機能的画像を用い、放射線照射後遅発性認知機能障害の病態を解明し、将来生じうる認知機能障害を予測したMRI機能画像検査法を明らかにする。 前年度までデータ収集を終了した。4月以降はデータ解析を中心に進んでいた。a)予備的解析として磁化率強調画像(PRESTO-MRI)による正常脳内血管および腫瘍血管の形態を評価した;照射脳における b)PRESTO-MRIによる微小出血、血管奇形、血管密度(特に認知機能や記憶の中枢として知られる側頭葉、海馬傍海馬エリア)の定性的・定量的評価、c)灌流画像による局所血流の定量的評価(特に側頭葉において血流低下の有無や程度)、d)拡散テンソル画像による神経線維の密度・散乱の評価条件の検討、e)長期生存者の認知機能評価(WAIS-III;WMS-R)などをおこなった。 本研究により明らかとなる晩期認知機能障害の病態は、今後の小児がんの治療方針に大きく影響を与えうると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)当初計画の遅延・変更 2)補助事業の目的をよりにも精緻に達成するための解析直し
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Strategy for Future Research Activity |
認知機能データ解析の結果では、放射線照射後の認知機能低下は2群間で有意差を認めなかった。したがって、研究デザインを見直し、放射線治療前に記名力障害やうつといった精神症状を呈する症例、および画像上水頭症を呈する症例を除く必要があると判断し再解析を行うことを予定している。現在は、本研究の予備的解析としてPRESTO-MRIによる正常脳内血管および腫瘍血管の形態評価に関する論文を作成中である。最終的に明らかにしたいことは、放射線照射後に脳内血管密度、血管奇形、血管形態変容、脳血管灌流、神経細胞密度、神経線維の密度・極性などの変化を究明することである。
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Causes of Carryover |
平成30年度に、データ解析および統計分析を行い、その結果を放射線学会において発表、さらに論文に仕上げる予定であったが、認知機能データ解析の結果では,放射線照射後の認知機能低下が2群間で有意差を認めなかった。従って研究デザインを見直し、放射線治療前に記名力障害やうつといった精神症状を呈する症例、および画像上水頭症を呈する症例を除く必要があると判断し,次年度に再解析を行うこととした。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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