2016 Fiscal Year Research-status Report
Super-SCIDマウスを用いた放射線のヒト正常肺組織への障害発生機構と防護
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16K19881
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
足立 成基 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 疾患モデル小動物研究室, 特任研究員 (60379261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Super-SCIDマウス / ヒト正常肺移植 / 炭素線 / 陽子線 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、日本人のがん死亡率の1位は肺がんである。治療法として、放射線療法は単独または化学療法/外科手術との併用でかなりの割合で行われている。肺がんの放射線治療では、副作用としてがん周辺部の肺正常組織に障害(肺線維症)がおこり、放射線治療における最大の問題となっており、正常組織への影響研究は避けては通れない。放射線治療の副作用の解明と防護のため、人体実験を避け、生きたままのヒト正常肺組織の長期間維持を可能にするSuper-SCIDマウスに皮下移植を行い、X線、粒子線(陽子線および炭素線)の照射を行う(陽子線:若狭湾エネルギー研究センター、炭素線:放射線医学総合研究所)。これにより、放射線治療の最重要課題であり、環境被ばくの重要課題でもある正常肺組織への影響解明の基礎資料を作成すると共に、防護策を検討し、国民の保健に貢献するのを目的とする。 移植ヒト正常肺組織を一定期間後摘出し、放射線照射による影響を病理変化および遺伝子発現変化の観察により調べた。遺伝子発現に対する影響は、マイクロアレイ法により発現を解析し、非照射組織の発現と比較することで行った。炭素線の影響では、遺伝子発現による変化は増加・減少数共に線量依存的に多くなっていた。 ヒト正常肺組織は医療機関で肺がん摘出手術において治療上やむなく切除されるがん周辺のヒト正常肺組織の譲渡により実験を行った。手術時等に採取されるヒト肺組織の譲渡に関しては、医薬基盤・健康・栄養研究所および医療機関の倫理委員会の承認を受け、匿名化のうえ、厳重な管理の下、医薬基盤・健康・栄養研究所にて移植実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト正常肺組織移植実験を行うため、マウス血中のIgGおよびIgMが検出限度以下(<1micro g/ml)のC3H/HeJ-md+ scid/scid LPS- マウスを医薬基盤・健康・栄養研究所動物施設SPF環境下にて生産を行った。 ヒト正常肺組織に関しては、肺がん切除手術の際、治療上切除せざるを得ない正常部分を患者および倫理委員会および倫理委員会の承認を得て移植に用いた。1辺3mmの大きさに切断したヒト正常組織をSuper-SCIDマウス両下腿部に移植した。 平成28年9月に放射線医学総合研究所にて、ヒト正常肺を移植したSuper-SCIDマウスに重粒子線(HIMAC)の照射を行った。照射2週間で摘出した。 炭素線照射ヒト正常組織の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて観察した。炭素線1Gyと3Gyでは減少した遺伝子プローブ数は135.5個、176個、増加した遺伝子プローブ数は85.5個、108.5個であった。 ヒト正常肺は、肺がん切除手術の際、治療上切除せざるを得ない正常部分の譲渡により実験を行っているが、最小限の大きさのためX線、陽子線への照射実験を行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に重粒子線の照射実験を行っているが、nの数を増やすため今年度も引き続きヒト正常肺組織の移植および重粒子線照射、X線および陽子線照射を行う予定である。 正常肺が手に入らない場合、過去に照射実験を行ったヒト正常肺組織を凍結保存しているため、遺伝子発現を中心に解析を行うことも視野に入れている。
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