2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸代謝、酸化ストレスを介したNAFLD/NASH肝細胞癌の発癌・進展機構解明
Project/Area Number |
16K19939
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 茂樹 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (10594872)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | NAFLD / NASH / 肝細胞癌 / 癌代謝 / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌の主な原因肝疾患としてC型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝(炎)[Non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)]が知られている。中でもNAFLD(NASH)は主に欧米で増加している疾患として知られていたが、近年本邦においてもその罹患率は増加しつつあり、NAFLD(NASH)から発生した肝細胞癌も増加している。近年、Transmembrane 6 superfamily member 2(TM6SF2)がNAFLDからNASHへの進展を予測する因子として同定され、NAFLD(NASH)及び動脈硬化性疾患のリスクファクターとして有用であることが報告された(Nat Genet. 2014, Hepatology. 2015)。本研究ではTM6SF2のNASH-HCC発癌における役割を明らかにする事を目的とする。 我々はこれまでに、パブリックデータベースを用いた解析を行い、TM6SF2の機能解析を行ってきた。NASH肝組織のマイクロアレイデータベース(GSE49541)を用いて、TM6SF2高発現症例において発現が上昇している遺伝子セットをGSEA(Gene Set Enrichment Analysis)を用いて解析したところ、TM6SF2高発現症例において脂肪酸代謝、酸化的リン酸化、アディポジェネシス等が亢進している事が明らかとなり、TM6SF2がこれらの反応を制御している可能性が示唆された。また、肝細胞癌組織のマイクロアレイデータベースであるGSE9843、GSE16757を用いた解析においてもTM6SF2高発現症例において脂肪酸代謝、アディポジェネシス等が亢進しており、これらの代謝経路を介して肝細胞癌の悪性度に寄与している事が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はパブリックデータベースを用いたBioinformaticsの手法を用いた解析を主として行った。これにより臨床検体におけるTM6SF2の酸化ストレス及び脂肪酸代謝との相関が明らかになった。また、昨年度は肝組織、または腫瘍組織のスライスを培養するex-vivo培養系のセットアップを行った。培養系は確立出来ており、本年度より薬剤を用いた実験を開始する事が出来る。 これらの事より実験はおおむね順調に経過していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、肝細胞癌細胞株を用いたIn vitroの実験によって、TM6SF2の癌細胞における働きを明らかにする。当科にて保有している8種類の肝細胞癌細胞株に対して、TM6SF2発現プラスミドベクターを導入し、TM6SF2強制発現を、TM6SF2を標的としたsiRNAを用いて発現抑制を行った細胞株を作成し、機能解析を行う。MTT assay にて増殖能、invasion assayにて浸潤能、scratch assayにて遊走能に与える影響を明らかにする。また、FACSを用いた解析を行い、アポトーシス細胞を検出し、TM6SF2がアポトーシスおよび細胞周期に与える影響を分析する。更に、我々の解析によりTM6SF2高発現が脂肪酸代謝に影響を与える事が示唆される。これを確認するため、コレステロール、アセチルCo-A定量により脂肪酸代謝を、H2O2やグルタチオンを測定することで脂肪酸の代謝に伴う酸化ストレスの変化を評価する。 続いて、ex-vivo培養系を用いた実験を行う。手術による切除後すぐの肝細胞癌組織および背景肝組織を、マイクロトームを用いて厚さ300micrometreにスライスし、細胞培養用メディウムを用いて培養を行う。この組織に対して各種薬剤を投与し、MTSアッセイにてそのviabilityを、カルチャー後の蛋白、mRNAを回収してその蛋白、遺伝子発現の変化を評価する。このようなex vivoの実験系を用いてヒト肝細胞癌組織/背景肝組織に対する薬剤の効果を評価することで、肝星細胞を中心とする間質細胞や微小血管などの腫瘍微小環境を残しつつ、薬剤感受性の評価を行う事が可能である。本研究では、NAFLD(NASH)の治療薬として期待されているスタチン、メトフォルミン、ペレチノインの効果を主に検証する。
|
Causes of Carryover |
試薬、消耗品の購入費、及び、研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたいと考える。
|