2016 Fiscal Year Research-status Report
塩分過剰による大動脈解離増悪メカニズム:IL-17によるECM制御機構の解明
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16K19973
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
西田 憲史 久留米大学, 医学部, 助教 (50624508)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大動脈解離 / 塩分過剰 / IL-17 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈解離は最近増加傾向にある致死的疾患である。申請者の予備的検討から心血管疾患の危険因子である塩分過剰が大動脈解離を増悪させ、そのメカニズムの中心にIL-17と細胞外マトリックス(ECM)が関与している可能性が示された。塩分過剰が大動脈解離を増悪させるメカニズムを解明し治療戦略を開発すると同時に、IL-17関連因子、ECM関連因子の病態バイオマーカーとしての有用性を検討することを目的に研究を進めた。 まず、塩分過剰がIL-17及びIL-17関連因子に及ぼす影響を検討するため、マウス大動脈組織を用いて評価した。バイオプレックスで評価したIL-17aは塩分過剰及び解離刺激で変化しなかった。しかし、リアルタイムPCRで評価したIL-17受容体は塩分過剰で増加した。このことから塩分過剰はIL-17受容体を増やすことで感受性を高めている可能性が推測された。事実、IL-17経路の主要下流因子であるNFkBは塩分過剰により活性化されることが蛍光免疫化学染色により示された。次に、塩分過剰がECMに及ぼす影響をマウス大動脈組織を用いて評価した。ピクロシリウスレッド染色で評価したコラーゲン線維は塩分過剰で有意な変化は見られなかった。しかし、ECM代謝の主要制御因子であるSmad2経路が塩分過剰により活性化されることを蛍光免疫化学染色にて証明した。さらに、IL-17によるECM制御を評価するため、マウス大動脈組織を用いてピクロシリウスレッド染色を行った。結果、IL-17ノックアウトマウスでは野生型マウスと比較し、有意にコラーゲン線維が増加していた。つまり、IL-17はECMを抑制性に制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、計画1.塩分過剰によるIL-17系活性化機序及び計画2.塩分過剰がECMへ及ぼす影響を概ね解析し、計画3.IL-17によるECM制御機構の解明を行っているところであり、ほぼ予定どおり計画を進行することができている。 今後はIL-17がECMを制御するメカニズムをさらに解析し、塩分過剰及び大動脈解離に関連する因子を明らかにし、それらのバイオマーカーとしての有用性を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-17によるECM制御機構を解明するために、マウス大動脈組織を用いて、細胞外マトリックス関連因子をリアルタイムPCR、ウエスタンブロット、ザイモグラフィーで評価する。また当施設独自に開発した血管引張強度測定器を用いて、血管強度への塩分過剰、IL-17の関与を明らかにする。 さらに塩分過剰、大動脈解離活動性を示すバイオマーカーとしてのIL-17、ECM関連因子の有用性をマウス大動脈解離モデル及び健常者ボランティアを用いて検討していく。
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Causes of Carryover |
塩分過剰が大動脈解離病態におけるIL-17及びECMの関与を検討するために、組織学的検討、生化学的検討を行っていったが、予想以上に順調に解析が進んだことで、マウス購入費、実験試薬、消耗品が予定より節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の今後の研究推進方策を進めるために、マウスの購入やマウス実験試薬、消耗品、組織関連試薬や生化学実験消耗品、遺伝学的解析の費用及び成果発表における費用として使用する。これにより当初の計画以上の成果を上げることを目指す。
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Research Products
(11 results)