2016 Fiscal Year Research-status Report
Neurogenin1による知覚神経前駆細胞への分化誘導法の確立とその応用研究
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16K20074
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
下山 哲生 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (30748447)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知覚神経細胞 / ES細胞 / 分化誘導 / 疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
疼痛に関しては日本国内および国外において、人口の約2割が慢性疼痛に罹患していることが疫学調査より明らかとなっており、慢性疼痛の病態機構の解明は、医学的にも社会的にも重要な課題である。本研究では、慢性疼痛の病態機構の研究を行う上で、安定的に大量の知覚神経細胞をES細胞より得るための分化誘導系の確立を目指している。 平成28年度においては、マウスES細胞のNgn1遺伝子座へのレポーター遺伝子(EGFP)のノックインを行った。その際、Ngn1遺伝子を保持するため、Ngn1の下流に2A配列と結合したEGFP遺伝子カセットを作製し、使用した。ノックインにはCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いた。まず、Web上のデザインツールを用いてNgn1遺伝子上の、適切なCas9のターゲット部位を選択した。続いて、Cas9およびガイドRNA発現ベクター pX330 (Addgene)にガイドRNAの配列を組み込み、CRISPR/Cas9コンストラクトを作製した。また、pCAG-EGxxFP (Addgene)にターゲット配列を組み込み、選択したガイドRNA配列により、ゲノム切断が確かに起こることを確認した。さらに、決定したガイドRNA配列およびターゲット配列に基づき、ターゲティングベクターのアーム配列を決定し、PCRによりマウスES細胞ゲノムより増幅、続いて2A-EGFPとともにpMulti-ND-1.0に組み込み、ターゲティングベクターを作製した。作製したターゲティングベクターおよびCRISPR/Cas9コンストラクト pX330をマウスES細胞に共トランスフェクトし、PCRによりNgn1下流にEGFPの組み込まれたES細胞のクローンを同定した。 また、マウスES細胞を複数の細胞増殖因子存在下で培養したところ、知覚神経細胞の分子マーカーの発現誘導がqPCRにより認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成28年度においては、CRISPR/Cas9システムを用いてレポーター遺伝子EGFPを2A配列とともにマウスES細胞に導入することができた。また、マウスES細胞を、特定の細胞増殖因子の存在下で培養したところ、知覚神経細胞の分化誘導の分子マーカーの発現がqPCRにより認められた。すなわち、知覚神経細胞分化誘導系の培養条件を見出しつつある。したがって、当初の実験計画におおむね沿った結果を得ているので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
知覚神経細胞を分化誘導する系の確立にあたり、添加する細胞増殖因子の種類、細胞増殖因子を添加する時期および添加する量に対しての検討と改良を行い、知覚神経細胞の分化誘導できる効率の向上を目指す。また、作製したNgn1-EGFPノックインマウスES細胞を知覚神経細胞分化誘導系に用い、蛍光を発することを確認したのち、ひき続いて、TRP等感覚受容体遺伝子の強制発現等により、慢性疼痛の病態機構の解析を行う。
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Causes of Carryover |
知覚神経細胞の分化誘導系の確立など、一部の実験において次年度に継続する必要が生じたため、次年度での使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
知覚神経細胞の分化誘導系の実験には細胞増殖因子が必要である。また、細胞培養を行う上でプラスチック培養皿および細胞培養液が不可欠である。さらに、分化マーカーの発現を確認するための抗体・免疫染色の試薬が必要であり、これらの計上を行った。
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Research Products
(3 results)