2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20283
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石田 麻里子 日本医科大学, 医学部, 助教 (60714780)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アレルギー性鼻炎 / Local allergic rhinitis |
Outline of Annual Research Achievements |
アレルギー性鼻炎の診断は,鼻のかゆみ・くしゃみ、鼻漏、鼻閉の3主徴を有し、鼻汁好酸球、皮膚テストまたは血清特異的IgE抗体、誘発テストのうち2項目以上が陽性で診断される。アレルギー性鼻炎と類似の症状を持ちながら採血等でアトピー性の証明ができない症例があり、これらの中には,下鼻甲介粘膜局所で特異的IgE抗体が産生される例があると考えられる。鼻粘膜局所に限局したアレルギー性鼻炎病態に対して、local allergic rhinitis(LAR)といった呼び方が提案されている。LARの定義は、誘発テスト陽性 and/or 局所IgE産生陽性である。 皮内反応や末梢血レベルでの抗原特異的抗体価といった、全身的なⅠ型アレルギー検査では異常を示さないが、鼻粘膜局所では抗原特異的抗体産生とⅠ型アレルギー反応に基づく症状を認める、花粉症を含めたアレルギー性鼻炎が存在する可能性が、このようにLARに対する関心が高まっており、欧州では診断といくつかの治療方針の提案までなされているが、本邦の臨床現場での実態把握は未だ不十分であり、非アレルギー性鼻炎と診断される症例においてLARがどの程度存在するかは不明である。 そこで、スギ・ヒノキ花粉症、ハウスダスト・ダニアレルギーを中心とした本邦でのLARの実態を日常診療の中で検討する。これらは、診断と治療方針の確立に直結する検討である。一方でLARがやがては全身的なⅠ型アレルギー反応陽性となっていくのかどうかといった自然経過(natural history)を検討し、アレルギー感作と発症、アレルギーマーチの病態解明にも関係すると考えられる。 LARの我が国での実態、特にスギ花粉については未詳の点が多い。当研究は日常診療においてLARの実態調査を行い、診断基準の作成に寄与することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレルギー性鼻炎または肥厚性鼻炎、慢性副鼻腔炎で、手術療法を施行した患者を対象とした。平成27年5月から29年2月までの1年10か月間に日本医科大学武蔵小杉病院において、下鼻甲介粘膜切除術もしくは粘膜下下鼻甲介骨切除術を施行し下鼻甲介粘膜が得られた28症例、性別は男22例,女6例,年齢は14~76歳であった。当院の倫理委員会を認証し、本人の同意が得られた症例を対象とした。方法:術前に採血を施行し、血清特異的IgE抗体(13項目)を測定した。ダニ(コナヒョウダニもしくはヤケヒョウダニ)、スギの項目のうち、血清特異的IgE抗体価がクラス0、1の項目に対して、誘発テストを施行した。ダニ誘発テストは、アレルゲン対照ディスクに治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」10000JAUを滴下、スギ誘発テストは治療用標準化アレルゲンエキス皮下注「トリイ」スギ花粉2000JAUを対照ディスクに滴下したものを用いて施行した。手術時に得られた粘膜をPBS内で5分間すりつぶし、遠心後に得られた上清を用いて、下鼻甲介粘膜局所での特異的IgE値(8項目)を測定した。手術で生じた下鼻甲介粘膜を生理食塩水ですすいでガーゼで拭い、付着した血液を除去した。直ちに液体窒素で凍結し、検体の重量を測定した。1mlPBS(pH7.0)内で採取した下鼻甲介粘膜を5分間すりつぶした。遠心分離機にかけ、300回転で10分間遠心した。上澄みを採取し、総IgE、抗原特異的IgE5項目(ハウスダスト、ヤケヒョウダニ、スギ、ヒノキ)を測定した。測定にはアラスタット3gを使用した。末梢血IgE値はIU/mlで表記されるため、測定値を検体1gあたりの値に換算した。結果:末梢血IgE値と鼻粘膜における特異的IgEは正の相関を認めた。ダニ、スギ個々における検討、誘発試験との関連については現在統計学的検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、手術症例数の蓄積と、データの解析を引き続き行っていく。現時点での傾向としては、末梢血IgEと鼻粘膜の特異的IgEは相関関係があり、LARと確定診断できる典型的な症例には出会っていない。検査の精度との関係の検討や、鼻粘膜局所の病理学的な検討を追加していく必要があると考えられる。また、副鼻腔陰影のある群と副鼻腔陰影のない群に分けて、下鼻甲介粘膜局所抗体価に差があるのか、その傾向を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は予定していた学会参加をしなかったため、旅費の分の使用予定額が未使用となった。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の物品費は予定額より費用を必要とした。次年度も本年度と同様に予定額より多い額が必要となる可能性があり、次年度使用額をその物品費に充てたいと考えている。
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