2016 Fiscal Year Research-status Report
小児神経芽腫自然退縮メカニズムの解明~治療への応用可能性の探究~
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16K20346
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 結 九州大学, 薬学研究院, 助教 (00608507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / 自然退縮 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
MYCNトランスジェニックマウスを用い、神経芽腫自然退縮における各種免疫の寄与を精査している。平成28年度は特に、当初計画通りNK細胞並びにB細胞に焦点を当てて解析を行った。 B細胞の中でも、腹腔内に多く存在し自然抗体の産生にも深く関わっているB2細胞のdepletionについて、リツキシマブ(リツキサン:抗ヒトCD20抗体)の開発を行ってきた米国Genentech社が現行唯一のマウス用CD20 depletion抗体を保有しており、本研究計画への同意と無償提供の了承を得て複数回に分けて国内に郵送、実験に供した。抗CD20抗体の投与レジメンの最適化を行い、CD19/B220のモニタリングによって確認を行ったところ、ほぼ完全にdepletionが出来ていることが確認された。 一方、NK細胞のdepletionは一般に抗アシアロGM1抗体が用いられるが、本研究で用いているMYCNトランスジェニックマウスおよびその神経芽腫を対象とした研究においては、交差反応並びに抗抗体の出現が頻発することからその使用は適当ではなく、体外で分離したNK細胞の投与による実験を行うこととした。 以上の実験手法を用いて、MYCNトランスジェニックマウスに自然発生する神経芽腫について、超音波画像診断並びに触診による観察と、生存期間の長期観察を行っている。これまでに得られた知見から、自然退縮にはB2細胞が産生する自然抗体と、NK細胞とがそれぞれ寄与していることが示唆されている。 これらのデータを元に、ヒトの神経芽腫自然退縮メカニズムの解明、また退縮を来さない症例への治療法開発へとフィードバックできるよう研究を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、神経芽腫の自然退縮に関わると目された免疫系細胞のdepletionならびに分離精製等、ハンドリング上の技術的な懸念はなく、仮説検証に要する実験は順調に進行している。 観察期間が長期に渡る実験もあるものの、設備の完備とテクニカルスタッフのサポートもあり、必要最小限の動物実験によって計画通り効率的に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で、MYCN-Tgマウス(hetero)で9週齢の時点で腫瘍が消失或いは腫瘍直径が5mm未満の個体において、抗神経芽腫抗体の存在が示唆されるデータを得ている。従って、この抗体が①神経芽腫細胞に対する特異的な抗体であるのか、②ADCC活性及びCDC活性をどれだけ持っているのか、③自然抗体であれば腸内細菌叢が関与しているのか、をex vivoで検証する。 本研究はヒトの神経芽腫の自然退縮メカニズムの解明並びに退縮しない症例への治療法開発へフィードバックすることが目的である。研究の進捗次第では、臨床応用を見据えた開発を想定した実験を行うことが考えられる。
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