2018 Fiscal Year Research-status Report
IL-18は全身性急性炎症に起因する精巣炎治療ターゲットとなりうるか
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16K20391
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
井上 岳人 兵庫医科大学, 医学部, 研究生(研究員) (30772652)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ライディッヒ細胞 / インターロイキン-18 / アポトーシス / デスレセプター経路 / ステロイドホルモン / 急性炎症 / 精巣 / エンドトキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はIL-18の急性炎症下における生殖細胞および精巣内の各細胞に対する役割を明らかにし、生殖機能不全および性腺機能不全の治療応用へと展開するための研究基盤を確立することである。これまでの研究により、高濃度のIL-18がマウスライディッヒ細胞由来TM3細胞のアポトーシスを誘導すると、同時にステロイドホルモン合成に関与するステロイドホルモン産生急性調節タンパク質の発現を低下させることを確認した。また、低濃度のIL-18でアポトーシス抑制因子の発現が増加することが認められた。平成30年度の目標は①高濃度のIL-18により影響を受けるTM3細胞のステロイドホルモン合成経路関連因子の測定項目を増やすこと、②低濃度のIL-18によりアポトーシス抑制因子の発現が亢進したミトコンドリア経路に関する測定項目を追加することであった。高濃度のIL-18ではミトコンドリア経路におけるアポトーシス促進因子およびcaspase-9の発現増加は認められなかった。従って、高濃度のIL-18はライディッヒ細胞に対し,デスレセプター経路を活性化しアポトーシスを誘導することが示唆された。 我々の既報では感染後、精巣に浸潤した免疫細胞から産生される過剰なIL-18により生殖細胞のアポトーシスが増加する可能性を示したが、本研究では同時に過剰なIL-18がライディッヒ細胞のアポトーシスも誘起する可能性が示唆された。このことより、精巣に浸潤する免疫細胞由来の過剰なIL-18を抑制することは全身性炎症下に起因する精巣炎の新たな治療ターゲットになりうるのではないかと考えている。つまり、急性炎症時の体内のIL-18の動態をモニタリングすることで、生殖機能不全ならびに性腺機能不全のリスクを回避するための治療方針を決定する重要なツールとなる可能性がある。故に、高度生殖医療や重症病態後のQOL改善に貢献できるのではと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの急性炎症下におけるライディッヒ細胞の解析により①炎症刺激(lipopolysaccharide:LPS)がライディッヒ細胞のアポトーシスを誘導し、ステロイド合成を低下させること、②LPS刺激下ではライディヒ細胞のIL-18の発現が増加しないこと、③LPS刺激下ではマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞のIL-18の発現が増加すること(急性炎症時精巣で上昇するIL-18は浸潤する免疫細胞由来である可能性が高いこと)、④高濃度のIL-18がライディッヒ細胞のアポトーシスを誘導しステロイド合成を低下させること、をまとめ、原著論文にて学術雑誌に投稿するも、受理に至らなかった。そのため、査読コメントに応えるため当初予定していた「ライディッヒ細胞-マクロファージ共培養実験」から、当該論文の追加実験に重きを置くこととした。予定研究期間を延長し、論文化を目指すため、全体の進捗状況としてはやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
<ステロイドホルモン合成経路の解析>急性炎症下(LPS刺激下)およびIL-18刺激下でのライディッヒ細胞のステロイドホルモン合成に関与するステロイドホルモン産生急性調節タンパク質の発現を低下させることを確認した。現在進行中のステロイドホルモン合成関連因子の発現を解析し、査読に耐えうるデータを得る。 <ミトコンドリア経路の解析>低濃度のIL-18刺激においてライディッヒ細胞のミトコンドリア経路に関与するアポトーシス抑制因子の発現増加が認められた。そのため、低濃度および高濃度のIL-18がライディッヒ細胞のミトコンドリア経路への役割を引続き解析する。 <ライディッヒ細胞-マクロファージ共培養実験>これまでの解析によりrecombinant IL-18に対するライディッヒ細胞の感受性が確認出来ており、マクロファージ由来RAW264.7細胞との共培養を行うことで、より生体に近い炎症状態を作製し、ライディッヒ細胞のアポトーシスおよびステロイド産生能に変化が認められるか確認する。また、マクロファージへのsiRNA導入により、IL-18が存在しない状況を作製し、比較することでIL-18の役割を確認する。
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Causes of Carryover |
当該研究課題において原著論文を学術雑誌に投稿するも、受理に至らず、査読者コメントに対する追加実験を実施し、論文化を目指していた。故に、当初予定していたライディッヒ細胞-マクロファージ共培養実験が行われなかったため、次年度使用が生じた。次年度は、実施できなかったライディッヒ細胞とマクロファージの共培養実験を行う予定である。
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