2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K20404
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
五十嵐 豊 日本医科大学, 医学部, 助教 (50771101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロ波 / 頭部外傷 / 脳損傷 / 生化学 / メタボロミクス / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロ波は、携帯電話やオーブンなどの日常生活から医療や軍事まで幅広い分野で用いられており、もはや人類にとって欠かすことができない。しかしマイクロ波が人体に与える影響は未だ十分に解明されておらず、脆弱な組織である脳に与える影響を明らかにすることは特に重要である。 我々は、マイクロ波の照射強度や照射時間を細かく調整することができる装置を用いて、新しい脳損傷モデルを作成した。本モデルの特徴は、高出力のマイクロ波を定量的に照射することができ、またラットの頭部を固定することで再現性が高く、またモデルの作製が簡便なことである。このモデルを用いて、病理学的、生化学的、行動科学的研究手法を用いて多角的に解析をし、マイクロ波照射による脳損傷の病態解明について研究を行っている。病理学的に検討した研究では、H-E染色を行い皮質運動野、海馬、側脳室脈絡膜の形態の変化や神経細胞数の変化を測定し、またアポトーシスを検出するTUNEL法を用いてアポトーシスした神経細胞の割合を測定した。その結果、照射後7日に側脳室脈絡叢に特異的にアポトーシスの増加が生じること、照射後28日に海馬において神経細胞数が減少することを明らかにし報告した。 さらなるマイクロ波照射による脳損傷の病態を明らかにするため、生化学的なアプローチとしてメタボロミクスによる解析を行っている。メタボロミクスとは、生体内の代謝物質を網羅的に解析することにより、タンパク質の活性を観察することで生体内の情報を包括的にとらえることができる手法である。脳虚血や他の頭部外傷モデルと比較することにより、本モデルの位置づけを決定し、新たな脳損傷のバイオマーカーとなる候補物質を検索を目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロ波照射による脳損傷の病態を明らかにするため、生化学的なアプローチとしてメタボロミクスによる解析を進めている。本モデルはマイクロ波照射による脳損傷の全く新しいモデルであり、メタボロミクスにより約900の代謝物質について網羅的に測定し、病態の解明を目的としている。 はじめに生化学的変化がピークに達する時間が不明のため、ミトコンドリアの機能不全が4時間以内に生じるという過去の研究から、照射前、照射後30分、1時間、3時間、24時間と継時的に測定を行った。多くの代謝物質は照射後1時間後にピークが見られ、24時間後には照射前の値へと近づくことが明らかとなった。個体数を増やしたさらなる実験では、照射前、照射1時間後、照射24時間後の3群で行う方針とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もマイクロ波照射後の脳組織に対してメタボロミクスを行う。前述のごとく、マイクロ波照射前、照射後1時間および照射後24時間の脳組織を採取し代謝物質の測定を行う。 測定する代謝物質はこれまでに生化学的手法などで取り扱われている低分子の物質が中心であり、生理学的・病理学的な意義に関する知識が蓄積されている。したがって、脳虚血や他の頭部外傷のモデルと本モデルを比較し、本モデルの位置づけを検討することが可能である。さらに新たな脳損傷のバイオマーカーとなる候補物質を検討する。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んだが、学会または専門誌で発表するまでの結果を出すには至らなかった。学会発表ならびに専門誌での発表による意見交換は、今後の研究をより有意義にするための重要な機会と考えている。特に本研究は、新しいモデルを用いており、またマイクロ波による脳損傷は近年報告が非常に増えており、同分野の研究者による意見交換がますます重要と考えている。初年度から国際学会での発表を目指したができなかったため、予定の金額を使用することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、国際学会で本研究成果を発表するために使用する予定である。
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