2016 Fiscal Year Research-status Report
低分子量Gタンパク質Rac1による軟骨形成の時空間的制御機構の解明
Project/Area Number |
16K20426
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
鈴木 大 昭和大学, 歯学部, 助教 (00585797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Rac1 / 軟骨細胞 / 未分化間葉系細胞 / コンディショナルノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
Rac1はRhoファミリーに属する低分子量Gタンパク質の一つで、細胞の様々な機能を制御している。申請者は軟骨形成におけるRac1の機能解析を目的とし軟骨細胞または肢芽未分化間葉系細胞特異的にRac1遺伝子を欠損させたマウス(Rac1fl/fl;Col2-CreおよびRac1fl/fl;Prx1-Cre)を作成した。その結果、Rac1は生体内における軟骨形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなったが、興味深いことにRac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの軟骨形態異常は大きく異なるものであった。そこで、その原因を探るため平成28年度はCol2-CreマウスおよびPrx1-Creマウスとレポーターマウスを交配させることにより、Col2-CreとPrx1-Creの発現パターンを可視化して比較を行った。その結果、成長板の静止軟骨細胞層においてPrx1-CreはCol2-Creと比べ発現が弱い可能性が示された。続いて、細胞内シグナル伝達系に着目し、胎生期のRac1fl/fl;Col2-Creマウスから採取した長管骨の軟骨細胞において、過去の報告通りp38 MAP Kinaseがコントロールと比較して低下している結果が得られた。しかし、Rac1fl/fl;Prx1-Creマウスにおいてはp38 MAP Kinaseの低下している可能性が低いデータとなった。以上の結果は、Col2-CreとPrx1-Creの発現パターンおよびRac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの細胞内シグナル伝達の変化のわずかな差異が軟骨形態異常の違いを引き起こした可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度はRac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの骨端軟骨における形態異常の細胞機能レベルの原因を解明するために、それぞれのマウスの骨端軟骨の組織標本を作製し、成長板の軟骨細胞の増殖および細胞死をコントロールマスウと比較し、増殖軟骨細胞層と肥大軟骨細胞層の肥厚の原因を解明する予定であった。Rac1fl/fl;Prx1-Creマウスの成長板の肥大軟骨細胞で細胞死が増加している可能性を示す結果が得られたが、過去にRac1fl/fl;Col2-Creマウスも同様の現象が起こることが報告されているため、今後その整合性について、詳細な解析が必要と考えられる。また、骨端軟骨における形態異常を遺伝子レベルの原因を解明するためにRac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの骨端軟骨の組織標本からマイクロダイセクション法により増殖軟骨細胞層と肥大軟骨細胞層を区分けしてmRNAを採取し、マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子解析を行う計画を平成29度に予定しているため、平成28年度、マイクロダイセクション法の確立を目指していたが、機械操作の技術を取得するのに時間を要しているため、予定通り計画を進めるためには今後この解析にかけるエフォートの割合を高くする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はRac1欠損時期と軟骨形態異常の関連を解析するために、Prx1-CreERマウスとRac1 floxマウスを交配させ、Rac1fl/fl;Prx1-CreERマウスを作成する予定である。Prx1-CreERマウスはタモキシフェンを投与することにより、Creリコンビネーションが任意の時期から誘導できるマウスである。Rac1fl/fl;Prx1-CreERマウスを作成することで、タモキシフェンを投与した段階からRac1を欠損させることができる。このマウスを用いてCol2-Creが発現を開始する時期に合わせてRac1fl/fl;Prx1-CreERマウスにタモキシフェンを投与することでRac1を欠損させたのち、骨端軟骨の組織解析を行う。このマウスの解析によりRac1の欠損時期と軟骨形態異常の関連を検討する。Prx1-CreERマウスはMalcom Logan博士(MRC-National Institute for Medical Research)から供与を受ける予定である。また、併せて、Rac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの骨端軟骨における形態異常を遺伝子レベルの原因を解明するためにRac1fl/fl;Col2-CreマウスとRac1fl/fl;Prx1-Creマウスの骨端軟骨の組織標本からマイクロダイセクション法により増殖軟骨細胞層と肥大軟骨細胞層を区分けしてmRNAを採取し、マイクロアレイを用いて網羅的遺伝子解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
Prx1-CreERマウスの輸送およびその飼育費用を今年度予定していたが、提供先との関係で、次年度に搬入する予定となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
MRC-National Institute for Medical ResearchからPrx1-CreERマウスを輸送するにあたっては、Amerisource Bergen社のWorld Courierを利用する予定である。
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[Journal Article] Deletion of Irf8 by Lyz2-cre/loxP accelerates osteoclast differentiation in vitro2017
Author(s)
Saito E, Suzuki D, Kurotaki D, Mochizuki A, Manome Y, Suzawa T, Toyoshima Y,Ichikawa T, Funatsu T, Inoue T, Takami M, Tamura T, Inagaki K, Kamijo R
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Journal Title
Cytotechnology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Expression of nephronectin is enhanced by α,25-dihydroxyvitamin D32016
Author(s)
Hiranuma K, Yamada A, Kurosawa T, Aizawa R, Suzuki D, Saito Y, Nagahama R, Ikehata M, Tsukasaki M, Morimura N, Chikazu D, Maki K, Shirota T, Takami M, Yamamoto M, Iijima T, Kamijo R
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Journal Title
FEBS Open Bio
Volume: 6
Pages: 914-918
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Cdc42 is crucial for facial and palatal formation during craniofacial development2016
Author(s)
Oshima-Nakayama M, Yamada A, Kurosawa T, Aizawa R, Suzuki D, Saito Y, Kassai H, Sato Y, Yamamoto M, Shirota T, Aiba A , Maki K, Kamijo R
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Journal Title
Bone Reports
Volume: 5
Pages: 1-6
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Rho GTPase protein Cdc42 is criticak for postnatal cartilage development2016
Author(s)
Nagahama R, Yamada A, Tanaka J, Aizawa R, Suzuki D, Kassai H, Yamamoto M, Mishima K, Aiba A , Maki K, Kamijo R
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 470
Pages: 813-817
DOI
Peer Reviewed
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