2017 Fiscal Year Research-status Report
密着タイプ義歯安定剤による顎堤粘膜への影響:SPH法による三次元シミュレーション
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16K20483
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平山 大輔 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (10758634)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 義歯安定剤 / 粘弾性解析 / 粒子法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が以前に作成した、SPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法による2次元粘弾性解析プログラムを元に、3次元の粘弾性計算プログラムをFortranにて作成した。作成したプログラムについて、簡単なシミュレーション解析を行い、計算の整合性を確認した後、義歯・密着タイプ義歯安定剤・粘膜・皮質骨から構成される3次元のサンプルデータを作成し、義歯に荷重するテスト解析を行っている。 作成したプログラムの粘弾性計算については、SPH法との相性の良さ、計算精度の良さから4要素型Voigtモデルを利用している。しかし義歯安定剤のような、非常に柔らかい性質をもつ粘弾性体については、クリープメーターによる材料実験でVoigtモデルの弾性率・粘性率などの物性値を導き出すことが難しいという問題がある。現在シミュレーション実験に使用している義歯安定剤の物性値は、クリープ測定の専門機関に依頼して試行錯誤の結果得られたものであるが、今後の汎用性を考慮すると、より簡便で確実な方法が望ましい。そこで、現在柔らかい粘弾性体の測定方法で主流となっている、動的粘弾性測定から得られた物性値を、Prony級数展開により一般型Maxwellモデルの弾性率・粘性率に変換して計算する方法を検討している。日本レオロジー学会主催のレオロジー講座にて粘弾性体の動的粘弾性測定の理論を習得し、現在SPHプログラムの粘弾性計算をVoigtモデルからMaxwellモデルに変更する作業を行っている。 一連の研究により、粘弾性体について材料実験を基にシミュレーション解析を行うことが容易となる為、今後SPH法は印象材など、より柔らかく大きく変形する材料についてもシミュレーション解析することが可能になると考えらえる。これは歯科分野に限らず、工学などの他分野においても有用な解析手法になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・昨年度が当初の予定を大幅に上回る外来業務の多忙により、研究に費やす時間を充分に確保できなかったため、研究計画の遅れをとっている。 ・以前より使用していたシミュレーション計算用のコンピューターが故障し、その復旧に時間を要した。ハードウェアの修理を繰り返したが、結果的に長時間の計算処理が不可能な状態となり、新しいコンピューターを導入し研究が可能な環境を旧コンピューターから移行するまでに時間を要し、研究計画の遅れをとっている。 以上の理由から、一年の延長申請をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている3次元サンプルデータでのシミュレーション解析の整合性を確認した後に、段階的にサンプルサイズを大きくして解析を繰り返し、最終的には上顎全体でのシミュレーション解析を目指して研究を進める予定である。現在使用しているシミュレーションモデルは、コーンビームCTで撮影したDICOMデータをSTLに変換することで作製したものであるが、この手法はモデルの完成までに多大な労力と時間を要しているのが現状である。近年、光学スキャナーの普及により、3Dモデリングを簡単に行うことが可能となってきたことを踏まえ、光学スキャナーによる解析対象物のSTLデータ化を行い、3次元モデルをより簡易的に作成する方法を並行して検討していく。 また現在進行中の、SPH法プログラムの粘弾性計算部分をVoigtモデルからMaxwellモデルに変更する作業を、今年度前期に完成させる予定である。同時並行で解析対象とする種々の義歯安定剤について、動的粘弾性測定を測定専門機関に依頼する。得られた測定値から、Prony級数展開プログラムにより一般化Maxwellモデルの弾性率・粘性率を求めてシミュレーション解析に使用する。この手法により、今まではクリープ測定が困難であった柔らかい義歯安定剤についても、シミュレーションに使用する物性値を得ることができると考えられる。 一連の研究を通して、当初の目的である複数の義歯安定剤についての3次元シミュレーションを行い、論文執筆をする予定である。
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Causes of Carryover |
理由:先に述べた外来の多忙と計算用コンピューターの故障により進捗状況に遅れを生じたため、研究期間の一年の延長申請をした。その結果、3次元のシミュレーション計算プログラムが確立されてから行う予定であった、シミュレーションモデルの作製と安定剤の物性値測定についても遅れが生じた。当初それらの名目に使用する予定だった費用がそのまま残り、次年度使用額が生じた。
使用計画:無歯顎模型の光学スキャニングの外注、義歯安定剤の動的粘弾性測定の外注、Prony級数展開プログラムの購入、今年度中の論文発表での使用を計画している。
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