2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔内圧測定を用いた吸引・嚥下能力診断システムの確立-安全な摂食嚥下を目指して-
Project/Area Number |
16K20502
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
深田 恵里 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (10758238)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔内圧力測定 / 摂食嚥下機能評価 / 最大吸引力 / 嚥下時口腔内圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベッドサイドや在宅環境で簡便に行える摂食嚥下機能評価方法として,摂食・嚥下時の口腔内圧力測定の実用化を目指している。 平成28年度はデータ採取を容易に行うために現状の装置の小型化を目指して,本体にディスプレイを搭載した装置を試作した。現在は,ディスプレイへの波形の表示方法や保存方法などを検討している。これまでは,装置とPCを接続して測定を行う必要があったため,小型化によって,より活用の場が広がると考えられる。 最大吸引力は,20代の若年者,65歳以上の高齢者での測定を行い,口腔機能との関連性を検討した。その結果,若年者の方が有意に高い値を示した。また,最大舌圧との関連性が示唆された。本装置はプローブであるポリウレタンチューブの交換のみで測定が可能であり,対象者への負担も少ないため,従来使用されている装置と比べて多人数の測定が可能であった。吸啜動作は食物を摂取するために重要な動作であるが,成人における吸啜能力を評価している研究は少ないため,今後幅広い年代での測定を行うことで,健常者の基礎データを得ることができると期待される。 嚥下時の口腔内圧力測定については,プローブであるチューブの長さや設置位置を変化させながら測定を行い,より最適な測定方法を検討した。硬軟口蓋移行部付近で圧力変化が計測される者が最も多かったが,口腔内の容量や口蓋の深さには個人差があるため,再現性が高く,圧力変化を確実に測定できる方法を今後も検討していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は幅広い年代の最大吸引力,嚥下時口腔内圧の測定を行う予定であったが,統一化した測定方法の検討に時間を要したため,研究対象者を増やすことが困難であった。 また,様々な場所で測定を行うために,装置を小型化したものを試作しているが,ディスプレイにどのように波形を表示するか,測定した波形をどのように保存するかを検討している段階であり,実用化に至らなかったことも対象者を増やせなかった一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成28年度実施予定だった装置の小型化と並行して,プローブの設置位置や固定方法を検討し,再現性の高い嚥下時口腔内圧測定方法の確立を目指す。口腔内の容量や口蓋の深さなど口腔内の形態には個人差があるため,対象者の口腔内状態を記録・計測することで,どのような対象者においても統一した測定が行えるように検討する。測定方法が確立した後,あらゆる年代(まずは若年者および高齢者)での測定を行い,健常者の基礎データを得るとともに種々の口腔機能との関連を探る。測定方法が確立した際には,基礎データの測定と並行して嚥下障害を有するもののデータを測定し,嚥下障害の部位・程度と吸引・嚥下時の口腔内圧力変化との関連性を検討する。 また,最大吸引力については,30・40・50代の測定および小児での測定を行い,対象者を増やすことで加齢変化についても検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は,これまでに使用していた物品を用いて測定を行ったこと,装置の小型化の部品などはすでに購入していたことにより,物品の購入必要性が最小限であったため。また,統一した測定方法の確立に至らなかったため,研究対象者数が予定よりも減少したことにより消耗品の使用数が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
測定装置をより精度の高いものにするため,センサーやディスプレイおよび測定に使用するためのパソコンを購入する。また,次年度は研究対象者数が増加すると考えられるため,消耗品の購入を行う。嚥下時口腔内圧の測定方法の検討や測定を行うにあたり,研究協力者の口腔内状態やプローブの設置位置を記録する必要があるため,口腔内撮影用のカメラを購入する。 また,得られた成果をもとに学会発表や論文投稿(英語論文含む)を行うため,旅費や翻訳費用などに用いる。
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