2016 Fiscal Year Research-status Report
βディフェンシンを介したレプチンによる口腔粘膜治療薬としての可能性
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16K20623
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
梅木 泰親 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (10552408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レプチン / ディフェンシン / 口腔 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔粘膜は常に外来異物に曝される厳しい環境下で、生体を防護する重要な器官である。 感染や機械的刺激、化学物質など様々な外来異物に対抗し、バリアとして働くが、その防御機構に異常や破綻が生じると生体は恒常性が維持できなくなる。なかでも全身疾患や喫煙などの影響を軽減し口腔粘膜のバリア機構を正常に働かせることは予防医学につながる。そこで本研究では、これまでに報告してきたレプチンによる口腔粘膜創傷治癒促進作用をさらに進歩させ、応用拡大することを目的に、生体の本来持つ抗菌ペプチドであるディフェンシンに着目し、レプチンを作用させることで、レプチンの直接作用とともにこれら生体内の抗菌活性をも上昇させ、喫煙などの口腔環境の悪化した状況下での感染治療、創傷治癒促進にレプチンを応用できる可能性につき明らかにすることを目的とする。 まず上皮細胞に対する遊走、分化への影響のみならず、hBD-2 が関与している可能性につき明らかにするために、日本家兎の下顎歯肉に化学熱傷を作成し、同部にレプチンもしくはPBSをコラーゲンに混和しゲル化させたものを毎日貼付した。これらをレプチン群と、コントロール群として貼付後6日目に組織採取し、hBD-2に対する免疫組織化学的検討を行った。その結果、コントロール群と比較して、レプチン群においてhBD-2の発現が日本家兔の下顎歯肉創縁部の上皮細胞で多い傾向が認められたものの、有意差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで見出してきたレプチンの口腔粘膜創傷治癒促進効果について、これまでに明らかにした上皮細胞に対する遊走、分化への影響のみならず、hBD-2 が関与している可能性につき明らかにすることを目的に以下の検討を行った。日本家兎の下顎歯肉に50%酢酸を含浸させた濾紙を2分間貼付し、化学熱傷を作成した。翌日より同部にタイプIコラーゲンであるCellmatrixにレプチンもしくはPBSを混和しゲル化させたものを創部に毎日貼付した。6、13日目に治癒が促進されたレプチン群と、コントロール群の歯肉を採取し、固定し、組織切片とした。これらを対象に、hBD-2のタンパク質発現を免疫組織化学的手法にて検討した。その結果、レプチン群とコントロール群にhBD-2のタンパク質発現を認めた。コントロール群に比べ、レプチン群でより発現が強い傾向が認められたものの、有意差は認められなかった。 今回研究の進行が遅れている理由としては上記のように従来の予想とは異なった結果が出たため、新たなhBD-2の発現をdetectするための手法の確率を行うため、現在は基本的手技の確立と応用法を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
喫煙モデル動物を作成し、口腔粘膜への影響を明らかにするとともに、その影響の軽減にレプチンの応用が可能か否かについて明らかにすることを目的に以下の検討を行う。まず、これまでに肺への喫煙の影響などで多数報告されている方法に準じ、タバコ主流煙発生装置を用いて、マウスなどの動物を3週間から半年程度飼育し、口腔粘膜への影響について検討する。口腔粘膜は経時的に採取し、RNA およびタンパク質の回収・保存および組織を固定保存し、組織学的に、また IL-8、IL-1β、hBD-2などを指標として免疫学的に、喫煙群、非喫煙群における口腔粘膜の状態について明らかとする。また、喫煙モデルマウスの口腔粘膜および歯肉の状態、各種炎症性サイトカインやケモカイン、hBD-2の発現などを指標に、口腔粘膜および歯肉に喫煙の影響が出ていると考えられる時期のマウスを用いて、口腔粘膜に化学熱傷を作成し、喫煙または非喫煙口腔創傷モデルとし、そこにレプチンを作用させることで、通常の粘膜におけるレプチンの創傷治癒促進効果と、喫煙下での粘膜におけるレプチンの創傷治癒促進効果とを比較し、また、喫煙下でのレプチンの有無と非喫煙下も比較検討することで、喫煙による口腔粘膜創傷治癒遷延への影響についても明らかとする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた計画に反して結果が思うように出ず、実験の進行が遅延したことが原因で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
in vitroの実験とin vivoの実験を並行して行うことで、前年度の研究の遅れを挽回する。具体的な購入するものとしては、タバコ主流煙発生装置やマウスなどの動物や、マウス歯周炎モデルを作製するためにPg菌やAa菌、それらを培養するための培養液や抗菌薬などの薬剤、またin vitroにおける喫煙下での口腔粘膜上皮細胞および歯肉線維芽細胞へのレプチンの影響を検討するためのWCS exposure chamberや、細胞の増殖、遊走、 分化についてクリスタルバイオレット法、スクラッチアッセイ法、定量的PCR法などに使用する試薬を購入する。また、研究の成果を学会発表や論文にて発表するために使用する。
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