2016 Fiscal Year Research-status Report
歯周組織の代謝活性作用を有するレーザーを応用した先進的矯正治療法の確立
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16K20644
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柄 優至 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (50737682)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞増殖 / レーザー / 歯の移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周組織培養細胞における細胞増殖能の検討について、ヒト骨芽細胞株(Saos2)、ヒトセメント芽細胞株(HCEM)、ヒト歯根膜細胞株(HPL)に対し、2種類の半導体レーザーLumix 2, USA Laser Biotech Inc (波長910 nm) およびユニタック製半導体レーザー(波長810 nm)照射を行い、生細胞イメージングシステムIncucyteTMZOOM (ESSEN bioscience) を用いて検討を行った。両レーザー各細胞ともに細胞増殖能および遊走能が亢進する傾向が認められた。また現在検討中であるが、MTS assay (Promega)についても、両レーザー各細胞ともに増殖が亢進する傾向が認められている。本実験の結果から、半導体レーザー照射が細胞増殖に影響を与えていることが分かった。細胞の種類、レーザーの種類、照射出力および照射時間等、照射条件は多種多様であり、検討が非常に困難を極める。至適条件は細胞およびレーザーの組み合わせにより違いがあると考えられるため、生体へ照射する際は再度至適条件の検討が必要であると考える。 並行して計画をやや変更し、平成29年度に行う予定であったラットを用いた人為的な歯の移動モデルの作成を行った。ラットの上顎門歯と第一臼歯間にクローズドコイルを装着し、門歯を固定源として第一臼歯を近心に移動させた。移動様相は歯体移動は難しく、傾斜移動が可能である。また、コイル装着をしてもラットの体重が有意に減少することはなく、増加することを確認した。 半導体レーザーが歯周組織の細胞に良い影響があることが示唆されている。今後は動物実験でレーザーの効果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、2種類の半導体レーザーLumix 2, USA Laser Biotech Inc (波長910 nm) およびユニタック製半導体レーザー (波長810 nm) を使用し、細胞にはヒト骨芽細胞株(Saos2)、ヒトセメント芽細胞株(HCEM)、ヒト歯根膜細胞株(HPL)、マウス由来破骨細胞株(RAW 264.9)、ヒト歯肉上皮細胞株(HOK)を用いて検討を行う予定であったが、照射時間、照射パワー、距離およびパルス等の照射条件と組み合わせると検討条件が多すぎた。また至適条件は細胞およびレーザーの組み合わせにより違うことが予想された。そのため検討条件が多いことから、MTS assay (Promega) 、ELISA BrdU assay (Roche Diagnostics) 、WST-8 assay (同仁化学)、PCRおよびWestern blot等の実験はコストがかかってしまうため、低コストの実験で至適条件検討の検討をすることが必須であると考えられた。そのためコストの比較的かからない、生細胞イメージングシステムIncucyteTMZOOM (ESSEN bioscience) を用いて、レーザー照射による各細胞増殖時の動態的変化を検討する実験がメインとなった。すべての細胞および各レーザーにおいて、レーザー照射が細胞へ良い効果をもたらすことが確認された。より効果のある条件を設定し、実験を進める必要があるため細胞実験は、やや遅れている。計画当初、平成29年度に予定していた動物実験を並行して行うこととした。ラットの上顎門歯と第一臼歯間にクローズドコイルを装着し、門歯を固定源として第一臼歯を近心に移動させ、人為的歯の移動モデルの作成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、MTS assay (Promega)およびATP determination Kit (Invitrogen)等を使用し実験し、さらに至適条件を絞り、その後PCRおよびWestern blotを行う。内容については、MARK/MEK シグナル伝達経路の中間経路であるMAPK/ERK 1/2 、p38 MAPKおよびSAPK/JNKのリン酸化について検討を行い、下流の経路として細胞核内のELKのリン酸化についても検討する。さらに、MAPK/ERK 1/2 阻害剤であるU0126、SAPK/JNK阻害剤であるSP600125、p38 MAPK阻害剤であるSB203580を用いて、詳細なシグナル伝達機構の経路を検証する。また、動物実験については、レーザー照射条件の検討を行う必要がある。実際の生体に照射すると、ユニタック製半導体レーザー (波長810 nm)は照射すると組織が損傷するため、低出力で照射する。組織学的検討では、歯の移動後の歯周組織を採取し、H-E染色と細胞活性因子であるKi-67、BrdUおよびPCNAなどの免疫組織化学染色を用いて評価する。また骨代謝関連マーカーであるALP、 BSP、RANKL、OPG、成長促進因子であるTGF-β、IGFなどの免疫組織化学染色を用いて評価する。さらに、時間が許せば、未固定新鮮非脱灰凍結切片を作製し、LMD6500(Leica)を用いてレーザーマイクロダイセクションを行い、各組織を回収し、定量PCR (Light cycler 350S) を用いた遺伝子解析および定量Western blot解析を行う。
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Causes of Carryover |
3月に注文していた物品の処理がうまく行われなかったため。次年度使用額はでないはずの予定であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3月に頼んだ物品の費用に使用する。
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Research Products
(2 results)