2017 Fiscal Year Annual Research Report
Disaster/Reconstruction/Discrimination;Case of Kaga clan's "Osukui"
Project/Area Number |
16K21054
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
丸本 由美子 金沢大学, 法学系, 准教授 (60735439)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本法制史 / 救恤 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年6月3~4日、京都産業大学が幹事校となり、同校壬生キャンパス「むすびわざ館」において開催された法制史学会大会にて、報告を行った。標題は「加賀藩非人小屋の生活と規範」である。当該報告では、加賀藩非人小屋の運営に直接携わる立場にあった与力らや、金沢町奉行と交代で非人小屋の運営責任者を務める算用場奉行の役職にあった人々が残した「非人小屋での業務記録」と言うべき史料に焦点を絞り、それらを元に非人小屋の運営の実情を確認した。これらの史料の成立年代は、藩領内で大きな災害が発生しなかった時期と概ね重なるが、内容には藩に大きな被害をもたらした寛文飢饉の直後の運営状況をも含み、大規模災害からの人的復興の記録とも位置付けうる性質をもつ。 その結果、非人小屋の入所者については、①「非人」と呼称されるが、入所中の一時的な状態を指し、元々の生業や身に付けている技術、退所後の暮らしは多様 ②速やかに退所し、自立した生活を営むよう望まれる ③小屋入所中は、本人の体調や技術を考慮した待遇がなされる ④小屋での製作品の販売によって、継続的な利益が上がっている ⑤体調の回復、退所後の就職を容易ならしめ、ひいては安定した生活を営めるよう、藩が方針を立てている 以上5点の特徴を見出した。 これらの特徴は、小屋の入所者が被差別民としての非人ではなく、物品の販売をとおして小屋の外の生活者とも交流があることを示す反面、⑤に見られるように、小屋退所後の生活のために藩による特別な配慮が必要な程度には、安定した生活を再建するには困難が伴ったことをも示す。また、②を裏返せば、小屋に入所する「非人」で居続けることは望ましくない状態である、との藩の認識も読み取れ、小屋入所者である「非人」もまた、一定の区別を受ける存在だったと総括できる。
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Research Products
(1 results)