2016 Fiscal Year Research-status Report
UCP1遺伝子多型に基づいたフコキサンチンによるヘモグロビンA1c改善効果の検証
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16K21251
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
三上 奈々 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80700278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | UCP1遺伝子多型 / フコキサンチン / ヘモグロビンA1c |
Outline of Annual Research Achievements |
フコキサンチン(Fx)はワカメやコンブ等の褐藻類に特有のカロテノイドであり、様々な健康機能性が期待されている。研究代表者らは以前に、日本人におけるFxの摂取が血糖コントロールの指標であるへモグロビンA1c(HbA1c)の低下に有効であることを見出した。一方、近年では生活習慣病の発症が遺伝的要因と深い関わりを持つことが明らかとなり、その予防効果においても個々人の遺伝体質を考慮した検証が重要であると考えられた。そのため、個々人の遺伝的体質を評価する一遺伝子多型(SNP)解析により、肥満や糖尿病の発症に関連があると報告されている脱共役タンパク質1(UCP1)の遺伝子型(A/A、A/G、G/G)を調べたところ、保有する遺伝子型によってFx摂取によるHbA1c低下効果は異なっていた。特にリスク遺伝子型であるG/G保有者に対して、Fxは強い効果をもたらすことが示唆された。そのため、本研究はUCP1遺伝子型に基づいたFxのHbA1c低下効果を検証することを目的として進めている。 本年度は、北海道留萌地域をフィールドとするるもいコホートピアにてフコキサンチンのヒト介入試験を実施した。対象は地域在住で研究に同意した成人男女120名とし、二重盲検無作為化比較試験を行った。研究参加者を無作為にプラセボカプセル群またはフコキサンチンカプセル群に割り付け、8週間のカプセル摂取前後で血液を採取した。得られた血液からSNP解析を行い、参加者のUCP1-3826A/G遺伝子型(A/A、A/G、G/G)を特定した。また、フコキサンチンの代謝物(フコキサンチノール)を定量し、フコキサンチンの体内への吸収を確認した。さらに、HbA1cをはじめとする糖代謝関連因子についてカプセル摂取前後の変化を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UCP1遺伝子多型とFxの効果を検証するために、先行研究の効果量とUCP1遺伝子型保有率から見積もったサンプルサイズ(120名)の研究参加者をリクルートすることができた。特に、検証に重要であるUCP1リスク遺伝子型の保有者が必要数リクルートされており、本研究の目的とする効果を検証可能であると判断できた。参加者は、脱落者1名を除いてカプセル摂取、摂取前後の検査を完了することができた。 また、研究実施・協力体制の面では、研究協力者のグループ割り付けや盲検化の保持も確立されており、協力機関での血液検体の保存、輸送や検査データの受け渡しも問題なく完了することができた。さらに、試験の品質を担保するために試験のモニタリングを実施し、データの漏れや誤りがないことも確認された。 検体分析に関しては、一方の群での血液中のフコキサンチノール濃度の有意な上昇がみられ、フコキサンチンの吸収も確認できている。 以上より、本年度は120名のヒト介入試験と一部の分析を予定通り実施し、次年度以降の解析に用いる血液検体やデータが滞りなく取得できたため、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
UCP1遺伝子多型とFx摂取によるHbA1c低下効果の関連を検証するため、本年度得られた血液検体やデータより、糖代謝関連因子の変化を中心に解析を行う。UCP1リスク遺伝子型の参加者においてFxによるHbA1c低下効果が見られた場合、HbA1cと並んで血糖コントロールの指標で非酵素的糖化産物であるグリコアルブミンを測定する。さらに、血管内や皮膚に蓄積する糖化産物であるAGEsの血中濃度についても測定する。これらの測定により、UCP1のリスク遺伝子型で見られたFxの効果がHbA1cのみならず、生体内の非酵素的糖化反応の抑制によって引き起こされているものかを明らかにしていく。一方で、UCP1遺伝子多型によるFxのHbA1c低下効果が再現されなかった場合、本研究の集団特性や試験実施環境などを過去の先行研究と比較し、効果に影響を与えている要因がないか詳細に解析・考察していく予定である。
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