2016 Fiscal Year Research-status Report
ホモロガスIn2O3‐ZnO薄膜の超格子形成機構とその熱電特性の解明
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16K21338
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
賈 軍軍 青山学院大学, 理工学部, 助教授 (80646737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 結晶化 / 熱伝導機構 / フォノンバンド / 状態密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度にはホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜の超格子層状構造の形成機構とその熱伝導現象の解明に関する研究を主に進めた。ここでmは整数であり、m +1はIn2O3層間のZnOの挿入層数である。 1)スパッタ法によりガラス基板上にアモルファスIn2O3とZnO複合酸化物薄膜を作製し、700℃の大気焼成によるホモロガス構造In2O3(ZnO)m薄膜を合成した。トルコのSabanci UniversityのProf. Ow-Yangと共同研究し、STEMを用いてアモルファス構造からホモロガス構造への結晶化過程を解明した。具体的には、アモルファス薄膜の表面から先に結晶化し、膜厚方向に沿って結晶化していく現象が明らかになった。さらに、焼成温度、焼成時間及び焼成雰囲気が結晶化への影響を検討し、アニオン元素よりカチオンであるInとZnの拡散は結晶化過程において支配的な要因であることを解明した。 2)ホモロガスIn2O3(ZnO)m薄膜における熱伝導機構の解明に関して、スパッタ法によりIn2O3とZnO複合酸化物ターゲットを用いて、サファイアC面基板上にエピタキシャルIn2O3(ZnO)m薄膜を作製した。産業技術総合研究所にあるパルス光加熱サーモリフレクタンス法装置を利用し、エピタキシャルIn2O3(ZnO)m薄膜の熱伝導率を評価した。ホモロガス構造を持つIn2O3(ZnO)m薄膜の熱伝導率は2W/mk以下で、非常に小さい。フォノンによる熱伝導率は同じ組成で作製したアモルファスIn2O3-ZnO薄膜の熱伝導率と同じ程度であった。また、In2O3(ZnO)m薄膜のInO2-層間のIn-Zn-O層数が増加するにつれ、熱伝導率は小さくなったことが明らかになった。これは第一原理計算を用いて計算したフォノンバンドおよびフォノンの状態密度により定性的に説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、ガラス基板に成膜したアモルファスIn2O3-ZnO薄膜から高い結晶性を持つホモルガスIn2O3(ZnO)m薄膜への形成に関する実験現象とメカニズムを調べた。さらに、In2O3(ZnO)m薄膜の熱伝導現象を評価し、第一原理計算を用いて熱伝導メカニズムを定性的説明した。得られた研究結果は学術論文で1件発表した。(Junjun Jia and Yuzo Shigesato, et. al, Formation of homologous In2O3(ZnO)m thin films and its thermoelectric properties, Journal of Vacuum Science & Technology A 34 (2016) 041507.) また、日本熱物性シンポジウムと日本応用物理学会(春季・秋季)とEuropean Materials Research Society (EMRS) 2016 Spring Meetingで計4件口頭発表した。日本熱物性シンポジウムのプロシーディングスに論文1件として掲載した。(Junjun Jia, et al., Thermal conduction phenomenon in homologous In2O3(ZnO)m film, Proc. 37th Jpn. Symp. Thermophys. Prop., A131, (2016).)
さらに、アモルファス構造からホモルガス構造への固相反応に関する理論を構築するために、九州シンクロトロン光センターに広域X線吸収微細構造(EXAFS)の測定を行い、焼成温度によってIn2O3(ZnO)n薄膜の局所構造の変化を把握した。これらのデータを基づいて、分子動力学法により固相反応のメカニズム解明へのシミュレーション手法を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、高温領域(400℃―600℃)において、ホモロガスIn2O3(ZnO)m 薄膜の導電性に関する欠陥形成メカニズムと電気伝導機構の解明を目的とした。酸素空孔はIn2O3(ZnO)m薄膜のキャリアの発生源と考えられる。エピタキシャルIn2O3(ZnO)m 薄膜を作製し、高温in-situホール測定装置を用いて、様々な酸素分圧でIn2O3(ZnO)m 薄膜のキャリア密度と移動度を調べ、Brouwer Diagramを用いて、酸素空孔の形成について検討する。 また、アモルファス構造からホモルガス構造への固相反応に関する理論を構築するために、まずガラス基板上に作製したアモルファスIn2O3-ZnO薄膜を様々な温度で焼成し、広域X線吸収微細構造(EXAFS)の測定を用いてカチオン付近の酸素配位数及び、酸素とアニオンの原子間距離を決め、アモルファスIn2O3-ZnO薄膜の局所構造を解明する。その後、アモルファスIn2O3-ZnO薄膜の局所構造を用いて、分子動力学法によるシミュレーションを行い、実験データと比較しながら、アモルファス構造からホモロガス構造になる要因を探索し始める。 これらの研究を遂行する上で、汎用性であるガラス基板上のホモロガスIn2O3(ZnO)n薄膜の形成方法を把握し、固相反応に関するメカニズムを理解し、さらに、電気・熱の伝導機構を解明し、薄膜熱電材料開発への指針を提供する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の計画研究を進めた上で、新しい実験現象を見つけた。それを解明するために、九州シンクロトロン光センターで広域X線吸収微細構造(EXAFS)の測定を行う予定です。この助成金は青山学院大学から九州シンクロトロン光センターへの往復旅費及び九州シンクロトロン光センターの放射光ビームラインの使用料として使う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、九州シンクロトロン光センターにある放射光ビームラインを用いて、焼成温度によってアモルファスIn2O3ーZnO薄膜の局所構造の変化に関する実験を3回行う。青山学院大学から九州シンクロトロン光センターへの往復旅費及び九州シンクロトロン光センターの放射光ビームラインの使用料として使う。
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