2016 Fiscal Year Research-status Report

大衆化する大学と「専門学校的なるもの」に関する実証的研究

Research Project

Project/Area Number	16K21385
Research Institution	Tokai University
Principal Investigator	瀧本知加東海大学, 熊本教養教育センター, 講師 (10585011)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	専門学校 / 大学の大衆化 / 青年期教育 / 職業教育 / 高等教育
Outline of Annual Research Achievements	2016年度は、本研究課題に関する書籍・雑誌記事の収集及び、専門学校の教育内容に関する調査・研究を行なった。資料収集は、関係する研究会・学会への参加及び、インターネットを使った資料検索と、国立国会図書館の利用を通して行い、専門学校の教育に関する研究は学会発表を行った後、論文としてまとめた。収集資料の分析の中で「大学の専門学校化」言説のある程度の傾向をつかむことができた。ひとつは、大学設置基準の大綱化以後の大学改革における各種の変化を、専門学校教育との対比で批判的に論じるもの、ひとつは、大学の教育内容の中で、職業教育との関係で「不要」「役立たない」とされる学問領域の価値を論じるものである。特に後者においては、大学における人文学の扱いに関する言説の中で多様されていることが分かった。前者についての分析は、今後の検討課題として残っている。ただし、収集した資料は共通して「専門学校化」を望ましくないものとして捉えており、大学と「専門学校的なるもの」の差異を強調するものであった。以上のように、2016年度の研究からは、「専門学校化」言説について、①大学教育改革の進展との関係、②大学の教育内容（カリキュラム改革の動向）との関係が強いということが明らかになった。次年度は、収集資料をもとに、より精緻な分析を行う予定である。今年度はこれら情報収集と並行して「専門学校的なるもの」と実際の専門学校のあり方を比較・検討するための基礎的作業として、専門学校教育の内容、特に学びの構造に関する検討を行なった。その結果を論文（「正統的周辺参加論の再検討ー学校教育への適用をめぐってー」『福祉社会学研究』第17号、pp79-92）にまとめた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 研究の遅延の原因は、2016年4月に生じた、熊本震災による大学の休講措置期間が長期に及んだこと、地震による研究設備への被害があり、復旧にむけた作業が必要であったこと、授業再開後の学生指導への対応など、当初予定していなかった業務が増えたことから、十分な研究時間が確保できなかったためである。本格的に研究が再開できたのは9月以降であり、計画的な資料収集を試みたが、複数回予定していた国立国会図書館での資料収集が一度しか実現しなかった。そのため、あたるべき雑誌資料に十分あたれておらず、さらなる収集作業が必要となっている。
Strategy for Future Research Activity	1.本年度は引き続き、「専門学校化」言説に関する資料収集にあたる。インターネットを利用した情報収集に加え、特に、国立国会図書館での集中的な雑誌資料の収集作業を通して、細かな情報の収集に努める。 2.収集した言説をまとめ、キー概念を抜き出し「専門学校的なるもの」の明確化の作業を行う。必要に応じて、分析方法を検討し、概念の明確化に努める。 3.これらと同時並行して、必要となる追加の情報・資料収集及び、調査を行うとともに、進捗に合わせた中間報告にあたる学会発表及び、中間成果の発表を兼ねた論文執筆につとめたい。 4.2016年度は地震の影響により計画していた作業を行うことができなかった。2017年度は、残された作業をスムーズに行えるように、研究時間の確保に努めたい。
Causes of Carryover	震災により研究のできない期間があり、予定通りの研究活動が行えなかったため。
Expenditure Plan for Carryover Budget	2016年度に未実施であった、資料収集を行うことで執行したい。