2016 Fiscal Year Research-status Report
At-211標識アミノ酸誘導体によるLAT1を標的とした新規RI内用療法の開発
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16K21603
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
大島 康宏 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任研究員 (00588676)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 211At / α線放出核種 / 2-AAMP / L型アミノ酸トランスポーター1(LAT1) / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、多くのがんにおいて高発現し、がんの独立した予後不良因子であるL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)を標的とした新規RI内用療法薬2-[211At]astato-α-methyl-L-phenylalanine (2-AAMP)を開発するため、平成28年度は2-AAMPの合成・分取精製条件、血漿中における安定性、LAT1発現がん細胞株における細胞内取込み、及び細胞障害活性について検討した。2-AAMPの合成・分取精製条件の検討では、酸化剤としてN-chlorosuccinimide存在下、標識前駆体と211Atを反応させ、アルカリ条件下にて脱保護を行うことによって2-AAMPを合成した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析の結果、放射化学的収率90.4%、放射化学的純度90%以上の2-AAMPを得ることができた。合成した2-AAMPをヒト血漿と混合し37℃で培養したところ、2-AAMPの分解は殆ど認められなかったため、2-AAMPは血中で安定に存在すると推察された。LAT1発現がん細胞に対する2-AAMPの細胞内取込みを検討した結果、2-AAMPはLAT1を介した輸送に特徴的なナトリウム非依存的な細胞内取込みを示し、さらにLAT1選択的阻害薬によって顕著に取込みが抑制された。この結果から、2-AAMPはLAT1を介して細胞内に取り込まれていることが示唆された。さらに、2-AAMPによる細胞障害活性について検討したところ、2-AAMPの放射能濃度依存的に細胞生存率を低下させ、細胞死を誘導した。これらの結果から、2-AAMPはLAT1依存的にがん細胞内へ取り込まれ、細胞障害を誘導したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は研究計画調書に記載した年度計画に従って進められており、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。 2-AAMPの合成・分取精製条件に関する検討において、研究開始当初はHPLCによる分取後の濃縮・溶媒置換において2-AAMP分解が認められ、2-AAMPの安定性確保並びに生物実験に適切な溶媒への置換方法の確立に時間を要した。この点について、2-AAMP分取時の有機溶媒を減圧留去する際、放射能濃度が上昇することで放射線分解が起こっている可能性を考慮し、抗酸化・ラジカル除去活性を有するアスコルビン酸を添加することによって改善を図った。その結果、2-AAMP分解を抑制することができた。また、試料中に残存するアスコルビン酸については、Sep-Pak精製を行うことによって除去することが可能であった。以上の結果から、アスコルビン酸の添加、Sep-Pak精製を実験操作に加えることによって、2-AAMPの安定性を確保しつつ、生物実験に適当な溶媒に置換することができ、以降の細胞実験を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、研究計画調書の年度計画に従い、LAT1発現細胞を用いて2-AAMP処置後のDNA二重鎖切断や細胞周期停止、アポトーシス等の誘導といった観点から細胞傷害メカニズムを検討する。これらと並行して、LAT1発現がん細胞を移植した担がんモデルマウスを作製し、2-AAMPの体内分布及び生体内安定性を明らかにする。また、体内分布の検討結果から、各臓器及びがんに対して付与される吸収線量を明らかにする。さらには2-AAMPによるがん治療実験を実施し、2-AAMPによる細胞致死的ながん治療効果が認められるかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究費申請額に比べ研究費交付額が減額されたため、H29年度の必要消耗品への予算配分を考慮した結果、購入予定としていた設備備品の購入を断念したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は2-AAMPの細胞傷害メカニズム及び担がんモデルマウスにおける2-AAMPの体内分布、がん治療効果について検討する。そのため、2-AAMP合成のための試薬、DNA二重鎖切断やアポトーシス検出用試薬を購入する。さらに、担がんマウス作製のためのヌードマウスを購入する。その他、細胞培養や実験動物の飼養に必要な消耗品の購入に使用する。本研究成果については学会発表および英文誌への投稿を予定しており、その参加費、旅費、雑誌投稿のための英文校閲費、雑誌投稿料に次年度研究費を充当する予定である。
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[Journal Article] Efficacy of LAT1 inhibition as a therapeutic target in esophageal squamous cell carcinoma2016
Author(s)
Yasuhiro Ohshima, Kyoichi Kaira, Aiko Yamaguchi, Noboru Oriuchi, Hideyuki Tominaga, Shushi Nagamori, Yoshikatsu Kanai, Takehiko Yokobori, Tatsuya Miyazaki, Takayuki Asao, Yoshito Tsushima, Hiroyuki Kuwano and Noriko S. Ishioka
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 107
Pages: 1499-1505
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant