2016 Fiscal Year Research-status Report
PETを機軸とするアルツハイマー病態カスケード診断法の確立
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16K21636
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
下條 雅文 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (20455348)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経科学 / グルタミン酸受容体 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はグルタミン酸受容体(iGluN、mGluR5)に着目し、(1)蛍光ライブセルイメージング、(2)二光子顕微鏡イメージング、(3)ポジトロン断層撮像(PET)により同受容体の分子動態と機能連結を評価可能であるか検証した。 (1)pH感受性の蛍光蛋白質SEPを融合したiGluN、mGluR5を初代培養神経細胞に発現させ、wide-field顕微鏡による蛍光ライブセルイメージング実施した。iGluNはシナプスにmGluR5は細胞膜全体にそれぞれ分布し、いずれの受容体も~80%が細胞表面膜に局在する事が明らかとなった。NMDAやPCPなど薬理学的操作に応答して生じるmGluR5膜表面量の変化は微量であり、解析対象をiGluNにも拡張して検証を進めている。 (2)マウス大脳皮質の体性感覚野にCranial Windowを設置し、皮質II/III層錐体細胞に発現させたEGFPやGCaMP6など蛍光蛋白質の分子動態を二光子顕微鏡イメージング可能である事が確認された。SEPを融合したiGluN、mGluR5遺伝子は、アデノ随伴ウイルスの許容長を超える為にベクターでの遺伝子導入が困難であり、トランスジェニックマウス作製も含めた遺伝子導入法を検討中である。 (3)放射性標識リガンド[11C]ABP688を用いてPET撮像を実施した結果、マウス生体脳におけるmGluR5受容体の非侵襲イメージングが実現された。PCPを尾静脈投与した後にPET撮像を実施した場合には、投与前と比較してリガンド結合量の低下が認められ、この変化率はiGluN-mGluR5機能連結の強度を反映する指標になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りウイルスベクターによる遺伝子導入法を確立し、蛍光ライブセルイメージング、二光子顕微鏡、そしてPET撮像によるイメージング実験系が構築された。SEPを利用したグルタミン酸受容体の動態解析では、定常状態における同受容体の細胞内分布や膜表面量の定量評価が達成された。グルタミン酸受容体間の機能連結に関しては、蛍光イメージングによる実験的な検証が不十分であるものの、薬理学的な作用とPET撮像の組合せによりリガンド結合量の変化率を検出できた点は有益であり、次年度以降の認知症モデルマウス脳における病態診断マーカーとしての応用価値が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光イメージングに関しては、次年度も引き続き共焦点顕微鏡システムなどを使用してS/N亢進を図りつつ、新しい遺伝子導入法も試行するなど、さらなる改善の必要性について検討する。当初の計画通り、認知症モデル動物脳における[11C]ABP688リガンドによるPET撮像の意義を検証し、薬理学的作用との組合せによる病態診断マーカーとしての価値を追求する。
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Causes of Carryover |
当初の計画で本年度中に完了する事を想定していた検証実験の一部で、更なる改善点などを検討する必要性が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は必要性の浮上した検証実験を完了する為に使用し、次年度の実施計画は当初予定を変更する事なく遂行する。
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