2017 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム稲作農村における階層分化と土地制度:紅河デルタとメコンデルタの比較研究
Project/Area Number |
16K21641
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
荒神 衣美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアII研究グループ, 研究員 (40450530)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 農村階層 / 農地制度 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、農村の階層変動を規定する重要な要素である農地制度が歴史的経路に依拠しつつ形成されてきたこと、それゆえにベトナムを代表する穀倉地帯であるメコンデルタと紅河デルタとでは農村階層変動の様相が大きく異なるものとなったことを、実証的に検証するものである。 2年目となる2017年度には、紅河デルタで調査地を選定し、省、県、社の各レベルにおける関連機関での聞き取り調査を実施した。すでに聞き取り調査と質問票調査を終えているメコンデルタの状況と比べて、紅河デルタ農村では市場を介した農地の流動化が進んでおらず、均質な小農社会が維持されていることが確認された。小規模かつ分散した農地の集約を図るべく、交換分合政策が実施されているものの、地質と面積からみた農家間の平等が重視されるゆえ、その仕組みはかなり複雑なものとなっている。 このような調査地を絞った形での聞き取り調査を実施する一方で、全国レベルのデータ(具体的にはベトナム統計総局刊行のVietnam Households Living Standards Suvery:VHLSS)を用いた、農村階層分化と農地保有の関係性分析の可能性についても、ベトナム社会科学院・社会学研究所の研究者などと意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に実施する予定だった紅河デルタでの質問票調査は、2017年度も実施に至らなかった。調査地を選定し聞き取り調査を実施したにも関わらず、質問票調査の実施には至らなかった理由は、ここまでの研究実施のなかで、本研究の仮説(農村の階層変動を規定する重要な要素である農地制度が歴史的経路に依拠しつつ形成されてきた、それゆえにベトナムを代表する穀倉地帯であるメコンデルタと紅河デルタとで農村階層変動の様相が大きく異なるものとなった)を検証するにあたり、メコンデルタと紅河デルタそれぞれから選んだ限られた調査地の実態比較が、必ずしも有効ではないかもしれないと考え始めたからである。すでに分析を終えているメコンデルタの調査結果からは、メコンデルタのなかでも農地利用の歴史、および農村階層分化と農地保有の関係性に地域差があることが分かっている。一方で、VHLSSのマイクロデータのなかに農村階層分化と農地保有の関係性を分析しうるデータが含まれていることも分かった。こうした状況から、紅河デルタでの質問票調査の実施の前に、VHLSSのマイクロデータを用いてメコンデルタと紅河デルタで主流となっている農村階層分化パターンを分析することを優先したいという考えに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
VHLSSマイクロデータ最新版(2014年版)を購入するため、ベトナム統計総局との交渉を進める。データが入手できたら、農地保有と農村階層分化の関係性について分析を行い、メコンデルタと紅河デルタそれぞれの典型とみられるパターンを抽出する。加えて、各デルタ内での地域差についても分析を行う。 マイクロデータの分析と平行して、ひきつづき農地制度に関する文献資料の収集と整理、およびメコンデルタと紅河デルタそれぞれの農村における聞き取り調査を進める。
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Causes of Carryover |
理由:実施予定だった紅河デルタでの質問票調査(委託)を実施できなかったため。 使用計画:当初予定していた紅河デルタでの質問票調査実施に代えて、ベトナム統計総局からVHLSSマイクロデータを購入する。また、農村での聞き取り調査のため、現地調査を実施する。
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