2018 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム稲作農村における階層分化と土地制度:紅河デルタとメコンデルタの比較研究
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16K21641
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
荒神 衣美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東南アジアII研究グループ, 研究員 (40450530)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農村階層 / 農地制度 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、農村の階層変動を規定する重要な要素である農地制度が歴史的経路に依拠しつつ形成されてきたこと、それゆえにベトナムを代表する穀倉地帯であるメコンデルタと紅河デルタとでは農村階層変動の様相が大きく異なるものとなったことを、実証的に検証するものである。 3年目となる2018年度は、予定していた家計調査マイクロデータ(Vietnam Household Living Standards Survey: VHLSS 2014年版)の購入について、ベトナム統計総局と交渉し、必要な項目のデータを入手した。農地保有と農村階層分化の関係性にかかる分析にいずれのデータ項目が利用できるか、データおよび質問票を精査し検討を進めている。 また、農村における世代間階層変動のひとつの鍵と考えられる、農家出身者の地方大学への進学と卒業後の進路について、メコンデルタ最大の大学であるカントー大学の学生支援センターで聞き取り調査を行った。ここでは、学生の進学・就職に対する心理状況には地域差があるという、興味深い話が聞かれた。すなわち、紅河デルタの農家出身者が進学・就職に伴って長期的に移住する傾向があるのに対し、メコンデルタの農家出身者は進学で一時的に故郷を離れたとしても、就職は出来るかぎり故郷でしたいと考える傾向が強いという。こうした農家出身の若者の心理状況にみられる地域差には、両デルタにおける農家の農地保有状況も関係しているのではないかと推察する。この点について、次年度、さらに考察を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初実施を予定していた紅河デルタにおける質問票調査を取りやめ、既存のマイクロデータを用いた研究に軌道修正するのに、時間を要した。しかし、本年度データを無事入手し、分析の準備を進めることができたので、最終年度の研究進捗には大きな問題はないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に入手した家計調査のマイクロデータを利用して、メコンデルタと紅河デルタのそれぞれにおける農地保有と農村階層分化の関係性について、分析を進める。また、地方大学に進学する農家出身者の職業への意識や実際の進路について、オンラインサーベイを通じたデータ収集を検討する。
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Causes of Carryover |
理由:初年度に実施予定だった紅河デルタでの委託調査を実施しなかったため。 使用計画:①本研究にかかる特集号企画を雑誌に申請するための、関係する研究者の招聘と研究会の開催、②主としてメコンデルタにおける聞き取り調査の実施、③カントー大学の学生を対象とした職業への意識や進路に関するオンラインサーベイの実施、④VHLSS最新版(2016年)の購入。
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