2018 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of masting on Asian black bear populations
Project/Area Number |
16K21702
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小坂井 千夏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 任期付研究員 (90637670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / マスティング / 豊凶 / 個体群動態 / 育児成功 / 繁殖 / 頭骨標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
堅果類の結実度(豊凶)が大型哺乳類の個体群動態に与える影響は明らかになっていない。気候変動によると考えられる堅果類の豊凶周期パターンの変化が指摘されているが、中・長期的な個体群動態への影響を把握した上で、今後の個体群管理、農業被害対策、生息地管理を検討しなければならない。本研究ではツキノワグマを対象とし、最終年度は堅果類の豊凶が繁殖や成長に与える影響について、以下の成果を得た。 春夏にはメスは母系に由来する土地への定住性が高く、堅果不作年の秋には母系に由来しない土地へも移動するものの、冬眠前までに春夏の行動圏に戻ることを明らかした論文が2018年度の日本哺乳類学会論文賞を受賞した。メスにとって不作年の秋は長距離の移動を伴って餌場を探し、再び出生地付近に長距離を戻る必要があることを示している。また、歯根部セメント質に形成される年輪幅が、メスでは育児を行うことで狭くなることを明らかにした。さらに、オスの歯の年輪幅は堅果類の豊凶によって有意に変化することはなく、不作年であってもオスでは栄養状態が極端に悪化していないと考えられた。 このように、堅果類の豊凶がツキノワグマの成長や繁殖率などの個体群動態に与える影響について議論するための基盤となる知見や、そしてこれまでデータの取得が難しかったメスの繁殖率に関わる情報を歯の年輪幅から解析できる可能性を示すことができた。
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