2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いたパレコウイルス筋炎の発症機序の解明と新規筋炎ウイルスの探索
Project/Area Number |
16K21709
|
Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
山元 誠司 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 研究員 (20649008)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | パレコウイルス / 筋炎 / 筋痛症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトパレコウイルス(HPeV)感染症は、新生児や乳児の重症疾患としてだけではなく成人の流行性筋痛症(筋炎)との関連が判明し、近年その認知度が急速に上がっている。HPeV感染に伴う筋炎では、HPeVの異なる遺伝子型でその発症部位が異なる可能性が見出されている。本研究では、ヒトiPS細胞の分化により得られる心筋細胞および骨格筋細胞を用いたHPeV感染実験系を確立し、異なる遺伝子型のHPeVの感染細胞種特異性および病原性の違いを解析することで、筋炎発症のメカニズムを解明することを目的とする。これまで、培養上清中に放出されたHPeVゲノムを簡便に検出するアッセイ系を構築し、異なる遺伝子型のHPeV株がそれぞれ未分化および土器施策にて分化誘導した骨格筋細胞の両方へ感染し、増殖することを確認している。 平成29年度は、分化に伴う内在性遺伝子のmRNAおよび蛋白質レベルでの発現確認をリアルタイムPCRおよび免疫染色法によりそれぞれ行った。その結果、薬剤誘導に伴って骨格筋細胞のマーカー遺伝子であるMyoD、Myogenin、そしてCK-M遺伝子の発現が増強していることが確認された。これらのマーカーが発現している段階の細胞においてHPeV感染によるインターフェロン応答の有無を検討したところ、感染後12時間でインターフェロンβが誘導されたことから、分化した骨格筋細胞においてもウイルス感染に対して自然免疫応答が惹起されることが明らかとなった。さらに、免疫染色法によりHPeV感染細胞の可視化を試みたところ、ウイルスの複製過程で生じるdsRNAを標的とする抗dsRNA抗体により、分化誘導した細胞内におけるHPeV増殖が確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光顕微鏡の導入時期が想定よりもかなり遅れたため、研究の進捗に大きな影響が出た。
|
Strategy for Future Research Activity |
心筋細胞への分化誘導系を整え、骨格筋細胞および心筋細胞におけるHPeV増殖能や細胞傷害性の差異について免疫染色法を中心とした解析を行う。またHPeV以外の筋痛症をもたらすウイルス(デングウイルスなど)を用いても同様の検討を行い、細胞傷害を細胞種特異性とウイルス特異性の両面から評価する。
|
Causes of Carryover |
細胞におけるウイルス感染動態の詳細な解析を可能にする蛍光顕微鏡が最終年度の後半に所属機関に導入されることになった。これを使用することでさらなる解析の質の向上が見込まれることから、次年度への繰り越しを行った。
|