2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21748
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
緒方 英明 北海道大学, 低温科学研究所, 特任准教授
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Project Period (FY) |
2017 – 2019
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Keywords | 金属酵素 / 生物無機化学 / タンパク質 / 分光学 / 構造生物学 / ヒドロゲナーゼ / 酵素反応 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
[FeFe]ヒドロゲナーゼは水素を合成・分解する反応を触媒する金属酵素である。本研究では超好熱菌Thermotoga maritima由来の2種類の[FeFe]ヒドロゲナーゼの反応機構を明らかにすることが目的である。本年度は、フラビンによる電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼHydABCの分光学的解析を中心に行った。HydABCを大腸菌により大量発現し、アフィニティークロマトグラフィーにより精製アポ酵素を得ることができた。2核鉄錯体を用いることで人工的に成熟化させることに成功した。電子伝達体を用いた活性測定では、触媒型ヒドロゲナーゼの活性能と同等であった。電気化学的赤外分光法により2つの酸化還元状態を取ることが分かった。もっとも酸化された状態では、活性中心はFe(I)Fe(II)と2価の鉄硫黄クラスターである。1電子還元されると2核鉄錯体が還元され、鉄硫黄クラスターは2価のままであることが分かった。また、ヒドロゲナーゼドメインのみを持つサブユニットHydAの大量発現系を構築し、人工的に成熟化させることにも成功した。水素酸化活性ではHydAがより高い活性を示した。また、センサー型[FeFe]ヒドロゲナーゼHydSについては、活性中心近傍のアミノ酸の変異体導入を行い、活性や分光学測定を行った。また、前年度に引き続き、構造解析に向けて調節性[FeFe]ヒドロゲナーゼHydSの結晶化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼの人工的成熟化に成功し、活性を持つホロ酵素を得ることができた。このホロ酵素の水素生成・分解の活性を測定し、触媒型[FeFe]ヒドロゲナーゼと同等の活性を示すことが明らかとなった。電子スピン共鳴法や電気化学的赤外分光法により2つの酸化還元状態を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼを高純度に精製し結晶化を行う。調節型ヒドロゲナーゼは結晶化条件の最適化を行う。放射光施設を用いてX線結晶構造解析を行うことにより立体構造を得ることを試みる。また、変異体導入などによりプロトン伝達経路を明らかにする。さらに分光学的手法を用いて活性中心の電子状態変化を測定し、これらを総合して反応機構の解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
平成30年度に電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼの人工的成熟化に成功し、活性を持つホロ酵素を得ることができた。平成31年度はこれらの酵素試料を大量に、かつ高純度に精製し結晶化を行う予定である。その実験を遂行するために必要な高精度のプレパックカラム等の購入を予定している。また、嫌気的に実験を進めるためのガス供給システムの整備と高純度のアルゴン、窒素ガス等の購入を予定している。調節型ヒドロゲナーゼは結晶化ロボットを利用した結晶化条件の最適化を行うが、そのためのスクリーニング試薬の購入も必要である。さらに得られたヒドロゲナーゼの同位体交換活性等を調べるための安定同位体(高純度の重水素(D_2)ガス, HDガスおよび重水(D_2O)試薬)も購入の予定である。
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Research Products
(10 results)