2017 Fiscal Year Research-status Report
複雑な流体現象のモデリング,マルチスケール構造の解明と数理解析
Project/Area Number |
16KT0024
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 浩明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40247234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 良弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50114088)
舟木 直久 早稲田大学, 理工学術院, 特任教授 (60112174)
小澤 徹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70204196)
柳尾 朋洋 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (40444450)
彭 林玉 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (90725780)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 複雑現象 / マルチスケール構造 / ナビエ・ストークス方程式 / 非平衡熱力学 / 変分的定式化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続いて,数理的モデリング,数学解析,非線形力学の応用について,分担者ごとに研究を推進した.数理的モデリングは,前年度までに明らかにした有限次元の非平衡熱力学系の変分的定式化を無限次元系に発展させて,物質移動および熱伝導を伴う粘性流体の数学モデルであるナヴィエ・ストークス・フーリエ方程式の変分法的な定式化を行った.数学解析については,R-有界な解作用素から最大正則性を導く方法により磁気流体に関する2相問題の時間局所解の一意存在を示し,最大正則性とスペクトル解析による解の減衰評価との組み合わせにより時間大域解の一意存在と解の漸近挙動を2種流体に対する方程式系,液晶を数学的に定式化するQ-tensorモデル,Navier-Stokes方程式の表面張力を考慮した1相問題について示した.また,正方格子上のGlauber-川崎力学において,生成・消滅の効果を適度に大きくする時空のスケール極限の下で,粒子の高密度領域と低密度領域の間の相分離が見出され,相分離超曲面は平均曲率運動をすることが示された.その他,多成分 KPZ 方程式,ノイズを加えた平均曲率運動,1階の確率偏微分方程式等に関する研究を継続的に行った.さらに,非線型シュレディンガー方程式の周期解に対し,非線型項のゲージ構造の破綻が爆発現象に結び付く様子を数学的に記述した.数値解析に関連する成果として,非平衡熱力学の単純孤立系について,離散的な変分的積分法を開発し,計算精度の高い数値解析アルゴリズムを提案した.また,非線形LC回路に現れるソリトン波や1次元の衝撃波を安定的に計算可能な構造保存型の数値積分法を開発した. 複雑現象に関連する応用的な側面から,統計力学と非線形力学の手法を用いて,生体高分子のキネマティクスから天体のダイナミクスまで,多重スケールに跨がる研究を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね順調に進んでいるが,研究代表者及び分担者4名で研究内容が,(1)数理的モデリング,(2)数学解析,(3)数値解析,(4)非線形現象への応用と多岐に渡っている.このため,それぞれの研究項目での成果をどのように取りまとめ,全体としての組織的な成果としてアピールできるかを考えつつ,最終年度の研究をを遂行したいと考えている.分担者の成果は,概ね良好であり,今年度は,学術雑誌に査読付き論文を17通,国際会議での発表が11件など,多数の発表を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
数理的モデリングについては,非平衡熱力学系の変分的定式化について,ディラック構造を明らかにする予定である.特に,熱力学系に特有な非線形かつ非ホロノミックな拘束から誘導されるディラック構造を見出し,それを用いたディラック力学系としてのモデリングを行う.これにより,複雑系の統一的な定式化手法の開発が可能になる.数値解析については,離散的なディラック構造と離散的なラグランジュ・ダランベール原理を導出し,構造保存的な数値解析法を提案する.また,無限次元系としてマルチシンプレクティック構造とそれに随伴する力学系の定式化を行う.特に,衝撃波のモデルにおけるマルチシンプレクティック構造を明らかにし,それに関する構造保存型の数値解析を実施する.数学解析については,2017年度の方法論を基盤として,まず,多相流体系の解析として,3種混合流体,圧縮性粘性流体の1相問題,非圧縮性粘性流体の2相問題,磁気流体の2相問題の解の一意存在の研究,及び周期解の存在定理に関しR-有界性を基盤とする新たな理論を構築する.また,相分離を伴う大規模系の数学解析に関連して,多成分KPZ方程式のカップリング定数が対称性の条件を満たさない場合に平衡測度の解析を行う.また,その大規模相互作用粒子系からの導出を目指す.さらに,2成分を持つ相互作用粒子系からの自由境界問題の導出を行う.非線型シュレディンガー方程式の数学解析に関連して,リープ・ティーリングモデルに現れる改良ハーディー不等式に於いて,球面調和多項式による直交分解の果たす役割を検討する.応用的な側面からの研究については,2018年度は,多重スケールの現象を理解する上で重要な鍵となる,高自由度系の次元縮約の幾何学的定式化に取り組む.特に,高自由度の保存力学系のダイナミクスを,一部の集団座標に射影する際に生じるノイズと摩擦の幾何学的な起源を明らかにする.
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Causes of Carryover |
物品購入を予定していたが,準備が遅れてしまい,用品費としての請求ができなかった.今年度は,早い段階で物品購入の請求できるように準備したい.
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Research Products
(31 results)