2016 Fiscal Year Research-status Report
里山里海の生物多様性資源を活かした循環型生物共生農業の構築
Project/Area Number |
16KT0029
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西川 潮 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (00391136)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柘植 隆宏 甲南大学, 経済学部, 教授 (70363778)
氏家 清和 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30401714)
横溝 裕行 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (30550074)
|
Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
|
Keywords | 環境配慮型農業 / 生物多様性 / 生態系サービス / エコツーリズム / 循環システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「生物共生農業」に「エコツーリズム」と「循環システム」という2つの視点を加え、地域レベルの持続型生物共生農業のモデルプランを構築することである。これにより、農業収益の安定化と安全・安心な米の安定生産の実現を図る。 サブテーマ1では、生物共生栽培田の生物多様性と米の品質特性を明らかにすることを目的として野外調査を行った。夏期、石川県羽咋市と宝達志水町において、栽培暦の異なる自然栽培田(1~6年目)と慣行栽培田の計20筆を対象として、節足動物の調査を行った。結果、慣行栽培田と比べ自然栽培田で、コモリグモ類の生息数は約1.8倍、稲株のクモ類の分類群数は約1.6倍、アシナガグモ類の生息数は約2.8倍、イトトンボ類の生息数は約7倍、アシナガバエ科の生息数は約3.6倍、ゴミムシ類の分類群数は約1.3倍多かった。自然栽培暦の影響は分類群によって異なったものの、概して自然栽培の取組みは水田の節足動物群集の多様性向上に大きな効果をもたらすことが示された。 サブテーマ2では、里山里海を観光資源としたエコツーリズムの市場調査を実施するために、先行研究のレビューを行った。また、アンケート調査票の作成に当たっては能登地域で現地調査を実施した。春蘭の里、白米の千枚田等の主要な観光地を視察するとともに、石川県庁にて能登地域の観光に関するヒアリング調査を行った。 サブテーマ3では、生物共生栽培米の市場調査と消費者行動分析を進めることを目的として関連文献の収集を行い、生物共生栽培米に対する消費者選好に対する影響要因の頭出しを行った。また、対象地域において自然農法に取り組んでいる生産者等に対してセミナーを開催し既往成果を共有するとともに実態調査を行った。 サブテーマ4では、水田の生物多様性向上と地域経済活性化のために有効な生物共生農業の振興策を導出するための予備的な数理モデルの検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の採否決定前からサブテーマ1の研究に着手していたため、サブテーマ1は予想以上に進展している。サブテーマ2は、先行研究のレビューと事例地の情報収集に当初の計画よりも時間を要したため、アンケート調査の実施を平成29年度半に延期した。このため、スケジュール面では当初の予定よりやや遅れているが、研究内容に変更はなく、研究は概ね順調に進展している。サブテーマ3、4の進捗は概ね予定通りである。
|
Strategy for Future Research Activity |
サブテーマ1は、前年に引き続き、羽咋市で水田の動物群集を対象とした補足野外調査を実施する。別予算で大学敷地内に新たに造成した16筆の実験田を用いて、生物多様性と米の品質に配慮した生物共生農法の検討を行う。 サブテーマ2は平成29年度前半には、平成28年度に実施する予定であったアンケート調査を実施する。また、平成29年度には、一般市民がどのような農業体験を望むかを調べるためのアンケート調査を実施する計画であるため、平成29年度前半に調査票作成等の準備を行い、平成29年度後半に調査を実施する予定である。 サブテーマ3は前年度の結果を踏まえ、まず、生物共生農業により生産された米の消費について一般消費者ならびに飲食業関係者を対象としたサーベイにより収集する選択データについて離散選択モデルにより分析する。併せて非仮想的評価手法である実験オークションの実施も検討する。 サブテーマ4は各サブテーマから得られた知見を統合し、水田の生物多様性向上と地域経済活性化のために有効な生物共生農業の振興策により地域にもたらされる経済効果を算出し、生物共生農業が経済的利益を生み出し持続可能となるための条件について数理モデルによる解析で明らかにする。数理モデルの構築の際に、他のサブテーマから得られた知見を統合するため、数理モデルの完成は他のサブテーマの進捗状況により大幅に遅れる可能性がある。プロジェクトメンバーとの連携を密に取ることにより、継続的にモデルを構築・発展できるように工夫する。
|
Causes of Carryover |
アンケート設計時間を十分に確保するため、サブテーマ2のアンケート調査を延期し、その費用を次年度に繰り越しした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
春から夏にかけてアンケート調査を実施する。
|
Research Products
(8 results)