2017 Fiscal Year Research-status Report
農薬変化体の動態解明に向けた農地流域水・微量物質循環モデルの構築
Project/Area Number |
16KT0035
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80432863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40274740)
安達 貴浩 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50325502)
門川 淳一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (30241722)
上田 岳彦 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80293893)
酒匂 一成 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (20388143)
松鵜 さとみ (松鵜さとみ) 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (10713349)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 流出解析 / 流域 / 農薬 / 環境変化体 / 農地 / 水循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
農地流域における水収支の評価に向け,甲突川支川中流の水田に隣接する約600mの区間を対象とした水文・水質観測に着手した.観測では,横断測量を行った断面の近傍に水位計および気圧補正用の圧力センサーを設置し,2017年6月29日~10月14日に10分間隔で水位データを取得した.さらに,水位計測期間中に河川用電磁流速計による流量観測と採水による懸濁物質(SS)濃度の測定を行った.観測結果から,調査区間における平常時の流量規模が0.2~0.5m^3/sであることが確認された.一方で,出水時の流量データを十分に取得できておらず,河道内流量情報の充実化と水位-流量関係の明確化が課題である.SS輸送量については,6月~8月には類似した特徴を示したのに対し,9月には他の期間より高いSS濃度が観測された.この点については,取水堰背後への堆積土砂が,収穫時期の堰操作によってフラッシュされた影響と推察されるが,SS輸送量の定量評価にはさらなる調査が必要である. 農薬環境変化体の濃度測定体制の確立に向けた取り組みとしては,平成28年度に特定した殺虫剤エトフェンプロックスおよびその農薬変化体2物質を高感度LC/MS/MSで測定するための条件を定めた。また,市販が確認できない農薬変化体1物質を合成した。平成28年度に実施した量子化学計算による濃度推定結果を検証したところ,MS感度に大きな影響を与えているのはPTPWsの塩基性のみならず,エレクトロスプレーイオン化の過程も大きく寄与していることが示唆された。本研究で開発した溶液内イオン平衡解析シミュレーションソフトウェアにより,高電圧下で帯電した液滴界面付近のプロトン化平衡を考慮した液滴内イオン化量の推定は妥当であることがわかったため,さらに脱溶媒和の過程をより精密に追跡することにより,濃度推定の精度を向上できるという理論的根拠を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出水時の水文観測データの充実化や周辺の農業用水路網に関する情報の取得が課題であるが,平成29年度に水文観測に着手しており,数値モデルの整備に関連する作業も実施していることから,研究全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も引き続き現地観測および農薬変化体の濃度測定体制の確立に向けた取り組みを実施する予定である。特に,環境モニタリングと水文観測との連携をさらに進め,環境モニタリング対象地域における水文・水質データの充実化を図る。平成29年度に合成した農薬変化体が少量であり,環境モニタリングを実施できないため,環境モニタリングを実施するのに必要な量を合成する。得られた農薬変化体を用いて,その物質の環境中濃度を高感度LC/MS/MSで測定するための条件を検討し,殺虫剤エトフェンプロックスおよびその農薬変化体3物質の環境モニタリングを実施する。量子化学計算モデルについては修正を加え,遠距離相互作用補正を取り入れた密度汎関数法を採用することにより,電荷密度を有する溶媒による溶媒和エネルギーを算出して取り入れ,現象を再モデル化することにより,濃度推定の精度を向上させる。さらに,現地モニタリング結果に関する諸検討および農地流域における物質動態予測モデルの構築に向け,数値モデルの整備・改良も平行して推進する計画である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に水文観測対象とした河川区間における出水の時間スケールが極めて短く,出水イベントを的確に捉えた水文データの収集が困難であった。そのため,現地調査およびそれに係わる分析のための支出が当初計画を下回った。平成30年度は,現地調査計画の再点検と実行,濃度測定体制の整備,ならびに数値モデルの整備を中心に実施する予定である。そのため,現地調査,各種分析,数値計算に係わる消耗品類,および現地調査や研究発表に係わる旅費を中心として研究費を支出する計画である。
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