2016 Fiscal Year Research-status Report
抗議運動の発生コンテクストに関するアジア・ラテンアメリカ地域間の比較実証研究
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16KT0042
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡田 勇 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (00650649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 勇介 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70290921)
西川 由紀子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (70584936)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 紛争研究 / 抗議運動 / アジア / ラテンアメリカ / 地域間比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、7月の採択決定を受けてから研究課題についての作業方針を再確認し、それぞれ(a)資源開発と抗議運動、(b)選挙と抗議運動、(c)国政との関係、(d)少数民族や少数者の視点、(e)大統領への権力集中といったテーマについて検討を進めた。 また、比較対照可能性をもつ国々を探ることを念頭に置きながら、アジア・ラテンアメリカのそれぞれについて研究課題に沿った準備を進め、フィリピンやペルー、ボリビアといった専門とする国と専門分野についての研究業績を発表した。2016年11月~2017年2月にかけて、国際的なセミナーやシンポジウムを参加・企画し、アジアとラテンアメリカ諸国についての最近の動向と学術研究の潮流をフォローするようにした。 こうした成果と深められた知見を持ち寄って、1月17日に名古屋大学にて集中ミーティングを実施した。その場では、これまでの抗議運動研究の理論的潮流を簡潔に確認した上で、サーベイを用いる場合にどのような形で抗議運動を問うことが有望か、地域間比較をする際のメリットとデメリットは何か、地域間比較を行う際の有望な対象国はどこかといった点が議論された。次年度に向けて、問題意識を共有しながら、それぞれが研究を進めることが確認された。 こうした背景を設けて、アジアと南米への出張を平成29年2月~3月に実施した。その中では、世論調査会社や統計機関とのコンタクトし、サーベイ実施にあたってのフィージビリティ調査を行った。詳細はサーベイのデザイン次第ではあるが、いくつかの有望な対象国について検討を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究チームの中での意識付けと、地域間比較についての可能性の模索を行った。その作業としては、それぞれが各自の専門とする対象国やテーマについて掘り下げる独立作業と、異なった地域を専門とする研究者が互いに情報交換し、意見を交わす機会とが繰り返し行われることが望ましい。こうした2つの軸による研究プロセスとして、平成28年度は順調に進められたと考えてよい。 また、本研究課題では研究デザインに起因するものではあるが、地道な作業を積み重ねることの必要性も認識された。本研究課題ではサーベイは各地域で1回ずつに限られるが、そうした方法論を取る場合には、その国と時点に依存した回答傾向を生み出すことが必須であり、特に抗議運動研究ではそうした国・時点に固有の要因を避けることは難しいため、よく各国の最近の動向についてフォローする必要がある。例えば平成29年2月8日に名古屋大学で実施されたフィリピンセミナーでは、フィリピンの世論調査機関の代表から、抗議運動が盛んだと考えられてきた同国で一種の「動員疲れ」(共感は維持しているが参加はしない)といった傾向が見られることが指摘された。またラテンアメリカの多くの国では選挙によって政権が交代し、新たな局面に入りつつある。ブラジルのように抗議運動が大きな政局変化を生み出した例もある(平成29年1月8日の国際シンポより)。選挙を前にして、抗議運動がこれから起きてくるのではないかとの声も聞かれた(平成29年2月カンボジア、3月ボリビアでの情報収集より)。こうした動向や理論を多く収集し、それを次年度以降のサーベイ計画に結び付けていくことが本研究の成功について重要であると認識された。目立った成果があったわけではないが、上記のような気づきを得た点で、本研究にとっては着実な前進があった初年度であった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り、集中ミーティングと外部識者を招いた研究会を実施していく。また各メンバーの専門性に沿った対象国とテーマについての研究を、より視野を広げ、情報交換を密にしながら進めていく。そうした作業の中、平成29年度後半には、集中ミーティングを通じて平成30年度以降に実施するサーベイの調査対象国を選定し、質問票の作成や調査実施方法の確認といった作業に移る。その一方で、各人がそれぞれの機会をとらえて本研究課題がもたらしうる学術的インパクトや研究の独自性についての検討を開始する。こうした作業は、何らかの形でまとめ、発表することが望ましいと言える。 以上は、単に文献だけでなく、現地出張や国際会議への参加といった形で進められることが望ましいだろう。例えば、平成29年4月29日~5月1日に南米ペルーで開催されるLatin American Studies Associationの年次大会に参加し、抗議運動研究の最前線ととりわけ南米における社会運動・政治参加研究についての情報収集を行う。この国際学会では、イベントカウントデータを用いた抗議運動研究やラテンアメリカ各国の運動研究について最新の発表が行われる。 また、平成29年6月17日~18日には日本比較政治学会において社会運動研究についてのパネルにおいて情報収集を行うほか、資源開発と抗議運動の地域内分析について試論を発表する。その場での質疑応答や反応を見ながら、研究方針を練り上げていきたい。 平成29年度末には、平成30年度以降のアンケート調査についての準備を具体化させていく。実際には調査対象国に赴き、委託会社と調整を行うほか、現地有識者との意見交換も行う予定である。また研究チーム内での役割分担の確認も行う。
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Causes of Carryover |
当初予定されていた調査対象地での調査につき、準備を進めていたものの先方都合により次年度以降に延期となったため。 また当該年度において購入する予定であった取り寄せ洋書につき、出版社からの入手が遅れ、最終的に困難となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査対象地の再検討を含め、調査を円滑に進められるよう準備を行い、整い次第、順次実施する。 発注していた洋書に代わる文献を精査し、随時発注を行う。
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Research Products
(19 results)