2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating molecular layout effects in gene expression
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16KT0068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
多田隈 尚史 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (10339707)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 1分子計測(SMD) / 核酸 / 蛋白質 / 分子モーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNAナノ構造(DNA origami)のナノメートル精度の分子配置技術を用いて、遺伝子発現機構のナノ反応場の再構成を目標としている。遺伝子発現は、親和性が弱い相互作用によって担われているが、細胞内では、特定の構造や足場(scaffold)に必要な因子が集積化する事で、効率的に反応が進んでおり、ナノ反応場の再構成と詳細な解析によって、その一端が理解できると期待される。 我々は、これまでに、DNAナノ構造上に転写酵素(T7 RNA polymerase、以下T7 RNAP)と基質遺伝子を集積化した"転写ナノチップ"を構築し、その性質を探ってきた。DNAナノ構造では、分子の固定場所をナノメートル精度で設計可能であるので、酵素(RNAP)と基質(2本鎖DNA)間の分子間距離を自在に設計することが可能である。また、基質遺伝子上の酵素認識部位(転写の場合はプロモーター配列)と酵素の衝突頻度は、分子間距離と、基質DNAの物理化学的性質に依存するので、分子間距離を制御する事で、転写活性を合理設計できる事が明らかになった。更に、転写ナノチップでは、溶液を漂う遺伝子を転写しにくい一方、チップ上に集積化された遺伝子は効率良く転写する事が明らかになった(直交性)。この性質は、転写チップ間のクロストークが少ない事を示唆するので、転写ナノチップを組合わせた遺伝子回路構築に有利である事を意味している。また、油中水滴を用いた実験から、転写ナノチップは1チップレベルで動作可能であり、また、活性も十分高い事が確認された。そこで、小さなRNA(miRNA)に反応するセンサーを更に転写ナノチップに組み込んだ所、外部シグナルに応答可能であり、また、転写ナノチップを組み合わせる事で遺伝子回路を構築できる事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ナノ分子配置技術を用いて、遺伝子発現機構の反応場の再構成を目標としている。 本年度は、主に、①構築してある転写ナノチップの性質確認と機能の拡張に注力した。また、②ナノ反応場における反応解析には、1分子解析が有効であるが、ナノ反応場における反応は、親和性が弱い相互作用によって進むので、通常の蛍光1分子観察手法(50 nM以下の蛍光基質条件下でのみ観察可能)では解析が困難である。そこで、高濃度の蛍光基質条件下(~microM)における1分子観察が可能な、ナノ開口観察(Zero-mode waveguides:ZMWs)用の基板の作製条件最適化を行った。 ①の転写ナノチップについては、様々なセンサーの組み込みを行った。通常の反応拡散系では、酵素がセンサーとなる配列を基質とする必要があるので、センサー部分の材質は、基質と同じ(RNAPの場合は2本鎖DNA)である必要がある。一方で、ナノチップの場合は、分子間距離で制御するため、シグナルに応じて分子間距離が変化する部分があれば良い。このため、センサー部分は、酵素反応に関わる部分(転写の鋳型)と分離が可能であり、様々な材質を用いる事が可能である。この性質を用いて、様々なシグナルに応答するスイッチを実現した。また、ナノチップ同士は干渉しにくいので、個別のシグナルに反応する転写チップを混ぜ合わせる事で、容易に遺伝子回路を構築できる事がわかった(投稿中)。 ②のZMWs基板では、作製条件(電子線描画条件)、表面処理条件の最適化を行い、観察シグナルがより安定的に得られるようになった。 本年度は、計画した各項目について、進展が見られた。また、転写ナノチップの構築においては、期待以上の進展が得られた。一方で、ナノ開口基板作製では、条件の最適化に予想よりも時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1) 従来のT7 RNAPに加え、真核転写の反応系を開拓していく(酵母のPol IIの系)。また、2) 転写に加えて、翻訳系への展開も試していく。更に、3) これまで別々に準備してきた2つの技術の融合を行っていく。ナノ集合化技術を用いて作製した転写ナノチップと、ナノ加工技術を用いて作製した基板を組み合わせていくことで、従来にない実験系を構築し、ナノ反応場の本質の理解に努める。
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Causes of Carryover |
本年度は、様々なシグナルに応答するセンサーの構築がよそうより進展したために、平成30年度で購入予定であった、研究試薬(合成オリゴDNA)の代金を前倒しで、平成29年度に請求し、支出を行った。しかし、一部のセンサーで、予想より条件最適化に時間がかかったために、前倒し請求を行った時点よりも、研究計画に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
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[Presentation] Construction of DNA origami base gene transcription nano chip2018
Author(s)
Masubuchi T, Endo M, Iizuka R, Iguchi A, Hyun YD, Sekiguchi T, Qi H, Iinuma R, Miyazono Y, Shoji S, Funatsu T, Sugiyama H, Harada Y, Ueda T, Tadakuma H
Organizer
第1回分子ロボティクス年次大会(併催・分子ロボット倫理シンポジウム)
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[Presentation] Rational design of orthogonal gene transcription nano device on DNA origami2017
Author(s)
Masubuchi T, Endo M, Iizuka R, Iguchi A, Yoon DH, Sekiguchi T, Qi H, Iinuma R, Miyazono Y, Shoji S, Funatsu T, Sugiyama H, Harada Y, Ueda T and Tadakuma H.
Organizer
CBI学会2017年大会
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[Presentation] Rational design of orthogonal gene transcription nano device on DNA origami2017
Author(s)
Masubuchi T, Endo M, Iizuka R, Iguchi A, Hyun YD, Sekiguchi T, Qi H, Iinuma R, Miyazono Y, Shoji S, Funatsu T, Sugiyama H, Harada Y, Ueda T, Tadakuma H
Organizer
第19回日本RNA学会年会
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