2018 Fiscal Year Research-status Report
大学教育のグローバル・スタディーズ 競争・連携・アイデンティティ
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16KT0087
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米澤 彰純 東北大学, 国際戦略室, 教授 (70251428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 文 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10221475)
北村 友人 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30362221)
黄 福涛 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (60335693)
黒田 一雄 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (70294600)
太田 浩 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (70345461)
米澤 由香子 東北大学, 国際連携推進機構, 准教授 (60597764)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | グローバル・スタディーズ / 高等教育 / 国際化 / 学士課程教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グローバル化により大きく変化してきた世界の大学教育の特質とその中での日本の位置づけを、特に学士課程のあり方の変化に注目して検討を行った。学士課程教育は、入り口に当たる中等教育までが国・地方の枠組みの支配的な影響下にあるのに対し、出口にあたる学卒労働市場、大学院教育においてグローバル化への趨勢が顕著という異なる2つの状況にはさまれ、社会システムとしてジレンマを抱えていると我々は考える。 この状況への対応は各国で多様であり、一元的に整理できない。具体的には、韓国では、1990年代以降の民主化による教育課程編成の自由化・多様化が学生や経済ニーズに対応する形での英語による教育プログラムの普及につながり、マレーシアでは、大学教育の発展の方向性が、多民族国家として教育を通じた国民統合と英語を中心としたグローバル・地域展開との間で揺れ動いて展開し、オランダは、もともとは欧州大陸型の一般教育をもたない修士までの一貫教育を大学教育の基盤としていたが、現在は、英語で留学生との共修を基本とするuniversity collegeとよばれる教育組織・プログラムが拡大、オーストラリアでは、中等教育までの国の教育システムとしては、多文化主義の浸透が進んでいるが、高等教育では、留学生を多数受けいれる反面で英語を唯一の共通言語とする方針が貫かれ、多文化主義が進まない現状がみられる。 日本の学士課程は、世界的に見れば、まだこのような直接的なグローバル化の影響は少ない方に入るが、近い将来、このようなジレンマのなかで学士課程教育のあり方が大きく転換していく可能性がある。これに対しては、単純なキャッチアップや政策借用的な議論ではなく、固有の社会的文脈に立ち返った議論が必要となる。以上の研究成果、国際書籍・論文の出版、国際ワークショップの開催等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、前年度までの調査の分析結果で得られた知見と先行研究・分析枠組みの統合を進めた。本研究では、グローバル時代での大学教育のあり方は、外部環境条件、大学の組織的活動・連携の違いによって多様なアプローチと特性が存在し、単純な一元化は生み出されないとの仮説を立てたが、各国の事例分析を統合した所見により、概ねこの仮説の妥当性が検証できた。 3月には、各メンバーが海外の研究協力者と共同ですすめた調査分析結果を持ちより、海外研究者を招聘した上で、筑波大学において国際ワークショップを開催した。これにより、グローバル・スタディーズの分析枠組み、英語での教育プログラムの多様な拡大が見られる韓国、国際リベラルアーツの普及が進むオランダ、市場的な学生移動の拡大の下で英語一言語主義が広がるオーストラリア、グローバル・リージョナルへの大学教育の接合のなかで国民統合を模索するマレーシアなどの事例分析の精緻化が進む一方で、日本をどう捉えるかについては、その方向性、政策と需要(学生・企業など)、供給(大学・教員など)の間のシステム間齟齬などが顕在化し、さらに掘り下げた検討が必要となった。この部分について、教育社会学などを中心としたグローバル時代の日本の教育の分析をオックスフォード大学の苅谷剛彦教授を招聘、議論・出版を行うことで、もともと国際社会システム論のアプローチを取る本研究と、国際日本研究との間の対話を通じた議論の精緻化・展開を図った。もともとは、本年度中に研究成果をとりまとめ、国際学会での発表を進めることを考えていたが、Comparative and International education Societyなど、発表したい学会の開催予定が平成31年度前半にずれ込んだことから、研究期間を延長し、これらの発表後の議論の成果を踏まえた上で成果のとりまとめと出版・公開を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を1年間延長し、平成31年4月にComparative and International Education Society(米国)で主に日本の教育システムに焦点を当てた発表、令和元年8月にはConsortium for Higher Education Researchers(ドイツ)にて5カ国の比較調査を中心とした発表、令和2年3月にAsia Pacific Association for International Education(カナダ)で再び日本に焦点を当てた学会発表を予定している。また、補足的な調査・分析を進めながら、研究成果をまとめた叢書の執筆・出版準備を進めている。これらを通じ、研究成果の還元を進める。
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Causes of Carryover |
発表予定の比較国際教育学会(米国サンフランシスコ)の日程が先方の学会の都合で次年度(31年4月)にずれ込んだ。同学会で発表、フィードバックを得ることが有効と判断、海外研究協力者との研究討議をした上で追加の国際比較調査・発表を行い、メンバーの所属する広島大学高等教育研究開発センターより研究成果の出版を準備中である。31年度後半に出版をした上で、その成果をもとに国際シンポジウムを行い、成果を還元する。
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Research Products
(48 results)