2007 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症候群に伴う急性巨核球性白血症の多段階発症の分子機構
Project/Area Number |
17013004
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊藤 悦朗 Hirosaki University, 大学院・医学研究科, 教授 (20168339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 力 弘前大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50195731)
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Keywords | GATA1 / 白血病 / 転写因子 / ダウン症候群 / TMD / JAK3 / KIT |
Research Abstract |
本年度は、ダウン症の白血病発症の仕組みを分子レベルで明らかにするために研究を進め、以下の点について明らかにした。 1. GATA1変異による白血病発症の仕組みを明らかにするために、正常および変異GATA1とエストロゲン受容体とのキメラ分子をSCF依存性DS-AMKL細胞株に遺伝子導入し、タモキシフェンでGATA1活性誘導後の増殖能を解析した。正常および変異GATA1もともにKITの発現量と細胞増殖を抑制したが、標的遺伝子の制御能力に差が認められた。 2. TMD細胞およびSCF依存性DS-AMKL細胞株を用いて、SCF/KITシグナル伝達系がダウン症の白血病発症に重要な役割を果たしていることを見出した。また、SCF/KITの下流のシグナルとして、DS-AMKLではRAS/MAPKとPI3K/AKTシグナルが重要であることを見出した。 3. TMDからAMKLに進展する時に加わる遺伝子変異の検索のためにJAK3変異を解析した。その結果、3株のDS-AMKL細胞株中2株でJAK3遺伝子変異が認められた。DS-AMKLでも12例中1例のJAK3変異がみられ、驚いたことにTMDでも12例中1例にJAK3の変異が認められた。DS-AMKL細胞株MGSでは同一のアレルのSH2ドメインとpsuedokinaseドメインにミスセンス変異が存在し、TMDでは受容体結合ドメインにミスセンス変異が存在した。IL-3依存性細胞株Ba/F3にレトロウイルスベクターを用いて変異JAK3を発現させたところ、IL-3非依存性増殖やSTAT5の持続的リン酸化が認められ活性化変異であることが明らかとなった。さらにDS-AMKLでもTMDとほぼ同頻度でJAK3変異が見出されることから、JAK3変異はTMDからAMKLに進展する時に起る変化ではなく、白血病発症のごく初期に起ることが明らかになった。
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