2008 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症候群に伴う急性巨核球性白血症の多段階発症の分子機構
Project/Area Number |
17013004
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
伊藤 悦朗 Hirosaki University, 大学院・医学研究科, 教授 (20168339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 力 弘前大学, 大学院・医学研究科, 講師 (50195731)
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Keywords | GATA1 / BACH1 / 転写因子 / ダウン症候群 / TMD / STAT3 / KIT |
Research Abstract |
ダウン症の白血病発症の仕組みを分子レベルで明らかにするために、本年度は以下の研究を進めた。 (1) 変異GATA1が、正常造血細胞の分化・増殖を障害する仕組みの解析タモキシフェンで完全長GATA1の機能的発現が誘導可能なDS-AMKL細胞株(CMKおよびKPAM1)を用いて、GATA1変異によって発現が障害されている遺伝子をreal time PCF法を用いて同定した。その結果、完全長GATA1の発現によりKITの発現が抑制されることが明らかになった。また、グロビン遺伝子は発現が誘導された。以上の結果などからKITはGATA1により正常では負に制御されているが、DS-AMKLでは発現の抑制が障害されていることが示唆された。 (2) 白血病発症を誘導する21番染色体上の遺伝子の同定 これまでに、我々は21番染色体上の遺伝子BACH1の過剰発現がin vivoで血小板造血を抑制することを明らかにした。前年度にmicroarray解析で得られたBACH1の標的候補遺伝子の発現をBACH1トランスジェニックマウスから巨核球を純化し、real time PCRで解析した。その結果、BACH1によって発現が負あるいは正に制御されている遺伝子を複数同定した。 (3) TMDがAMKLに進展する時に加わる新たな遺伝子変異の解析ほとんどのTMD細胞で、恒常的STAT3のリン酸化が認められ、TMDの発症にJAK/STAT系の分子の異常が存在することが示唆された。そこで、変異遺伝子を絞り込むために、恒常的STAT3のリン酸化の仕組みの解明を進めた。STAT3のリン酸化に関わるgp-130のシグナル伝達系に注目し、サイトカインあるいはサイトカイン受容体に対する中和抗体を用いてSTAT3のリン酸化の解析を行った。その結果、KPAM1細胞ではLIFのautocrineによって恒常的STAT3の活性化が生じていることが明らかになった。現在、臨床検体を用いてLIFや受容体の発現の解析を進めている。
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