2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高倉 伸幸 Osaka University, 微生物病研究所, 教授 (80291954)
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Keywords | 癌 / 発生分化 / 血管内皮細胞 / 血管新生 |
Research Abstract |
近年、血管新生の分子メカニズムの解明が進み、これらの分子機序を応用した血管新生抑制剤の開発が進んできている。しかし、血管新生抑制剤投与後に、低酸素状態が誘発され、がん細胞の悪性化が生じることや、腫瘍周囲から悪性度の高いがん細胞の浸潤が生じることが報告されてきている。我々は、血管新生抑制後に、腫瘍周囲に成熟した血管が残存し、この血管ニッチ領域にがん幹細胞が棲息していることを報告してきた。つまり、腫瘍周囲の血管を破綻させなければ、がん増大の原因となるがん幹細胞の細胞死を誘導できず、最終的に一旦血管新生抑制剤により縮小したがんも、再発すると考えられる。そこで、腫瘍周囲の血管の成熟化の分子機序の解明と、その破綻を目的に研究を実施した。その結果、腫瘍周囲の未熟な血管が拡大化する際には、腫瘍周囲に集積した造血幹細胞、あるいは平滑筋細胞が分泌するアンジオポエチンー1が内皮細胞のレセプター型チロシンキナーゼTie2を活性化し、内皮細胞からアペリンを分泌させることが判明した。アペリンは低酸素などの条件で内皮細胞で発現が亢進する7回膜貫通型のGPCRであるAPJのリガンドで、我々が以前血管の内腔拡大化に機能することを報告してきた分子である。このアペリンは、内皮細胞への刺激が加わると、血管透過性因子ともいわれているVEGFによる血管透過性を抑制した。これはVEGFによる内皮細胞同士の接着に必須のVE-Cadherinの細胞内移行を強く抑制することによることが判明した。血管ニッチでは、血管近傍にがん幹細胞が存在するのにもかかわらず、抗がん剤の効果が見られないことは、腫瘍周囲の成熟血管では、透過性がきわめて抑制されていることに起因する可能性が考えられた。以上の結果に立脚してVE-Cadherinの発現を抑制しうるmicroRNAを探索し、miR125bを同定し、抗腫瘍効果を確認し得た。
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Research Products
(18 results)